ゲストハウスじわり注目 被災地との橋渡し役も

相部屋が中心の宿泊施設「ゲストハウス」が仙台圏でじわりと注目を集めている。低価格と宿泊者同士の交流のしやすさが特徴。東日本大震災後はボランティア活動の希望者を現地につなぐ宿が現れるなど、さまざまな役割が期待されている。(報道部・氏家清志)
 9月下旬に訪ねたのは「梅鉢(うめばち)」。仙台市宮城野区にあるゲストハウスだ。午後7時すぎの1階ラウンジは夕食のさなか。宿泊者とスタッフら8人が和やかにテーブルを囲んでいた。
 ゲストハウスは素泊まりが基本だが、「梅鉢」のように500円程度を払えば、夕食の提供を受けられるケースがある。
 「仕事は何をされていますか」「出身はどちらですか」。初対面らしく言葉は丁寧だが、会話は自然と転がっていく。提供された酒で、交流はさらに深まった。
 「ホテルだと1人で寝るだけで寂しい」。仕事のため利用した神奈川県の陶芸家富田啓之さん(36)は「他の宿泊者やスタッフに『ただいま』と言える温かい雰囲気がある」と続けた。
<全国400軒に急増>
 ゲストハウスは現在、仙台市内では青葉区と宮城野区に計3軒ある。関係者によると、塩釜市内でも来年の開業を目指す動きが出ている。
 宿泊料はドミトリー(相部屋)で1泊2500~3000円が一般的。若者や長期滞在者の利用が多い。情報サイト「週刊バックパッカー新聞」によると、2006年に全国で約40軒だったのが、現在は400軒ほどに増えたとみられる。個人旅行や外国人旅行者の増加が背景にあるという。
 宿の多くは共用部分に大テーブルを一つだけ置いたり、立ち飲み方式にしたりしている。サイトの向井通浩編集長(47)は「飲食を共にできるなど情報を交換しやすい。旅人同士の出会いと交流が魅力になっている」と指摘する。
<現地に誘う「窓」>
 そこに震災でクローズアップされるようになったのが、被災地とボランティアをつなぐ役割だ。
 梅鉢にも震災後、大勢のボランティア志願者が宿泊した。100人以上を被災地のボランティア団体に橋渡ししたオーナー加賀真輝さん(32)は「支援を求める人や組織に結び付けたいと思った」と振り返る。
 名物料理や文化といった地域の魅力・情報を積極的に発信する宿も多い。ゲストハウスを研究し、震災後に仙台市内の施設を訪れた共栄大国際経営学部講師の石川美澄さん(32)は「ゲストハウスは復興支援や、旅行者に地域の魅力を伝え、現地に誘う『窓』になり得る」と注目する。
[ゲストハウス] ホステルやバックパッカーズとも呼ばれ、旅館業法では「簡易宿所」に分類される。素泊まりが基本で浴室やトイレは共用。1人一つのベッドが用意され、4~10人程度が泊まる相部屋「ドミトリー」を備える。宿泊者自身が布団やベッドのシーツを敷く宿が多い。

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