コストコがアマゾンに負けない理由

コストコは長きにわたり、会員制小売業モデルを先導してきた。イン ターネットやオムニチャンネルでの小売が全盛である現在、コストコの事業戦略はいささか古風にすら映る。しかし、使い古されたこの事業モデルの背後には、 最先端のインターネット小売業者でさえ切望してやまない基盤が潜んでいる。それは、顧客ロイヤリティだ。

ロイヤリティはおそらく小売業者にとって最も価値のある資産であり、コストコの成功にとっての命綱でもある。顧客を繰り返し戻ってこさせるという小売業者の能力にこそ、投資家は今後着目していくべきだ。

ロイヤリティの多様な源泉

コ ストコといえば、低価格で高品質な商品はもちろんのこと、給与水準が業界トップであることでも有名だ。フォーチュン誌によると、コストコの新人の時給は 11.5ドル、従業員全体の平均時給は22ドルである。これは同業他社に比べかなり高いが、CEOのクレイグ・ジェリネクは、こうしたことが生産性を向上 させ、退職率を減らし、長期的には会社の収益性を高めていくという信念を持っている。特に退職率の減少は、もっと評価されてしかるべき、コスト削減策なの だという。

従業員が会社に抱く愛着こそ、コストコ他の小売業者とを分ける大きな要素ではあるが、同社はまた、顧客にも多くを還元している。フォーチュン誌によると、輸送費や包装費、仕入れ価格等の定常的なコストを削減して、顧客により多くの割引を提供しているのだという。

「ざっくり言えば80%~90%は顧客に還元しています」とCFOのリチャード・ガランティはフォーチュン誌に明かしている。

こうした結果、コストコはフォーチュン誌の”2015年版最も尊敬されている企業”の16位に入った。それもそのはず、2015年に米国での会員数は史上最高の8,100万人に達し、会員継続率は実に91%を記録したのだ。

–{世界中でロイヤリティを獲得するコストコ}–

世界中でロイヤリティを獲得する

コストコは米国本拠の企業だが、海外市場でも勢いを増しており、特に日本、英国、スペインで好調である。各国の小売市場で激烈な競争にさらされても、コストコは本国で成功している事業モデルで結果をだしているのだ。

品 ぞろえの良さ、商品の品質の高さ、業界トップクラスのカスタマーサービスが、世界中の買い物客に受けている。国によっては生鮮食料品にかなり高い基準が課 せられている場合もあるが、コストコの商品へのこだわりと、各国市場の嗜好にあった品ぞろえが、成長のカギとなっている。

ロイヤリティとは信頼から生まれてくるものである。顧客は、コストコの品質、新鮮さ、品ぞろえ、そしてこうした商品を提供している企業を信愛している。このことが世界中で勝利の方程式になっているのである。

会員制の強みと、Amazonと逆行する在庫管理

アナリストや投資家も、コストコの会員継続更新率の高さと、全世界的な成功に着目しはじめており、いまや小売業界内で比較すべき競合企業はAmazonしかいないとまでいわれるようになってきている。

両 社とも、ロイヤリティを原動力とした会員制小売業で卓越しているが、コストコには他の小売業者とは違って、Amazonに対する免疫になるような強みを 持っている。コストコの店舗で買い物をするためには、年会費55ドル(2016年には値上げが予定されている)を支払う必要があるが、この年会費が同社の 利益の75%を占めているのである。ここに、コストコがあれだけの低価格を提供できる理由がある。

さ らに、Amazonがあらゆる商品のワンストップ・ショッピングとしてブランディングをしているのに対し、コストコでは意図的に品ぞろえを抑えている。あ る分析によれば、コストコはほとんどの同業他社と比べても少ないSKU(最小在庫単位)しか抱えていないが、そのことが有利に働いているのだ。それは、サ プライチェーンが簡略化され、在庫管理をやりやすくなること、そして小売業者側の購買力を強めることに貢献している。

こうしたことすべてが、オンラインでの存在感がほとんど皆無の、真のブリック・アンド・モルタル小売業者であるコストコが、このオムニチャンネル・リテイルの時代に、Amazonに肩を並べる売上を上げている理由なのだ。

上昇を続けるコストコの株価}–

ロイヤリティが教えてくれること

上昇を続けるコストコの売上高と株価に投資家はすでに祝杯をあげている。今後の海外での成長や会費の値上げもあり、同社株を買った人はさらなるリターンが望めそうだ。

し かし、ここで投資家が真剣に考えるべきことは、小売業における顧客ロイヤリティの持つ役割についてであろう。新たな投資先を見定める際には、どの小売業者 が消費者を最も店舗にリピートさせているのか、そして他店に浮気をさせていないのか、といったことが重要になってくるのである。Amazonが安値で顧客 を奪い取っていく危険性がつねにあるいま、後者は特に重要なことだ。コストコの例が示しているように、正しい製品を棚に並べ、顧客が喜んで支払う価格でそ れを販売する。これが基本なのである。

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