コメ余りが深刻化する中、6月末現在のコメ在庫が前年同期より増えた都道府県の上位5番目までを東北が占めていることが4日、河北新報社の分析で分かった。増加量トップは宮城で、秋田、青森、岩手、山形と続く。5県がコメ販売に大苦戦している実態がうかがえる。全国では昨年農家に支払う概算金(仮渡し金)を引き下げた産地が概して善戦、東北では福島を除く5県が前年以上の概算金を出したことが裏目に出た。
農林水産省の調べでは、6月末現在の全国の在庫量は217万9800トン。秋田(17万200トン)が最も多く、次いで北海道(16万6200トン)、宮城(15万1300トン)、山形(14万3500トン)、新潟(12万4200トン)の順。在庫増減量でみると表の通り。
東北全体の在庫量は前年同期より約9万1300トン増え、77万7100トンとなった。東北の在庫増加量は全国の増加量5万9100トンを上回り、東北を除く全国の在庫量は逆に減っていることが分かる。
分析の結果、宮城の在庫量は09年産宮城米の40.5%にも匹敵する。秋田も35.9%に相当し、09年産米が大量に売れ残る公算が大きい。
東北のコメが苦戦している理由として、東北大大学院農学研究科の冬木勝仁准教授(農業経済学)が第1に挙げるのは全農が農家に支払う概算金。
不況で消費者の志向は銘柄米から低価格米へと変化している。それに対応して、09年産米では一部産地が概算金を引き下げ、福島でも会津産コシヒカリを60キロ当たり600円、中通り産コシヒカリを200円それぞれ安くした。だが、福島を除く5県は、高かった08年産米と同額か、若干高めの概算金だった。
「結果として高値でコメを仕入れた県は、安値販売の流れに乗り遅れてしまった」と冬木准教授は指摘する。
要因はほかにもある。低価格で販売するためには、千葉や茨城、栃木など大消費地に近い産地ほど物流コストが安くて有利だ。
日本農業研究所の服部信司客員研究員(東洋大名誉教授)は「銘柄米が人気だった時代は、東北の地理的な位置も障害にはならなかった。だが、品種改良や栽培技術の向上でコメの品質格差が小さくなり、価格勝負の時代になった現在は、首都圏からの距離が負担となりつつある」と言う。
「コメ消費減の傾向で、流通では小回りが利く対応が求められる時代になったことも、生産量が多く、県単位の販売が中心の東北にはマイナスとして作用している」と冬木准教授は付け加える。
10年産米の概算金は、全国的な過剰在庫に加えて、4月に導入された戸別所得補償制度も複雑に関係し、一段と引き下げ圧力が掛かる。
既に概算金が決まった新潟では魚沼産コシヒカリが60キロで前年比2200円安(1万6500円)、一般のコシヒカリで1400円安(1万2300円)と、10%を超える下落だ。
全農みやぎの千葉和典本部長は「高い概算金を設定すれば、そのことが足かせとなって販売不振に陥ってしまう。09年産米の処理費用の問題もあり、10年産米の概算金は大幅に引き下げざるを得ない」と話している。