政府・自民党は4日、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉で重要5分野の一つとしている主食用米の関税率について、現行水準の778%を段階的に500~600%に引き下げる方針を固めた。生産調整(減反)の廃止によって米価は下がるとの見通しから、関税引き下げも可能と判断した。平成5年のウルグアイ・ラウンド(多角的貿易交渉)から維持した高関税政策を大きく転換することになる。
コメの関税率の引き下げは、米国や豪州が要求している。政府・自民党は米粉や飼料米の関税撤廃を検討しているが、米国は主食用米に対しても「数年かけてでも関税を完全撤廃してほしい」と求めていた。日本は完全撤廃について国内農家への影響から「混乱が大きい」と拒否してきた。ただ、関税率を引き下げると国産米の海外輸出の促進や国内農家の大規模化などをもたらすと判断、数年ごとに段階的に引き下げることで調整に入った。
主食用米の関税に関連、自民党の石破茂幹事長は2日、札幌市の討論会で「(生産)コストを下げると、関税を下げていっても国内の農業が打撃を受けない水準はある。778%が唯一絶対のものではない」と述べ、関税引き下げに前向きな姿勢を示した。
コメの関税率778%は、政府がウルグアイ・ラウンドで「ミニマムアクセス米」と呼ばれるコメの部分開放受け入れと引き換えの形で設定され、海外米と60キロあたり平均2万円の価格差を付け、大規模な輸入を食い止めていた。それでも、消費者の「コメ離れ」が加速し、昭和38年に1340万トンだったコメの消費量は、今年800万トンを割り込む試算もある。
自民党幹部は「500%台なら大規模な輸入は食い止められる」とみており、政府・自民党はTPPを契機に減反の廃止と関税引き下げをセットで断行することで、コメ政策を抜本的に改革する考えだ。