夏の記録的な猛暑により、コメどころ東北の生産現場で、今秋収穫するコメの品質が低下するとの懸念が広がっている。米粒が白く濁る高温障害が各地で発生し、1等米がほぼないとみる農家もいる。等級が下がれば価格下落は避けられず、「経営が成り立たない」と悲鳴が上がる。
「白濁したコメが多い」
「いつもは1等米ばかりだが、今年はゼロに近い」
秋田市のコメ農家佐藤重博さん(76)が嘆いた。
7月中旬の記録的大雨で「あきたこまち」などを育てていた水田の大半が水没。水路が土砂で埋まり、収穫までに一度も水を張れなかった区画もあった。
水害と猛暑に雨不足も重なり「出来は最悪だ」と佐藤さん。「全体的に小さく、白濁したコメが多い。3等米に引っかかればいい方だ」と落胆した。
山形県庄内地方で大規模に稲作を営む庄内こめ工房(山形県鶴岡市)の斎藤一志社長(66)は「コメの白濁は毎年、少しはあるが、今年は相当ひどい。高温障害に強いとされる『つや姫』が一番深刻だ」と肩を落とす。
1等米の割合は10%ほどで、例年の90%を大きく下回ると予想。「米穀卸による買い控えが既に起きていて、相場が下がっている。今後、さらに売りづらくなる」と懸念する。
カメムシの食害も
「作物はお天道様との勝負。自然相手なのでしょうがないが、1等米が少ないのは本当に残念」と唇をかむのは宮城県角田市のコメ農家中島清利さん(64)。食味は変わらないが、2等米は60キロ当たりの価格が600円程度下がり、収量も約1割減っていることから損失は数十万円に上るとみる。
「天候が原因なので保険でカバーできるかどうかは分からない。毎年の暑さにどう対策を講じればいいのか」と頭を抱える。
猛暑の影響で発生したとみられるカメムシの被害も出始めた。
宮城県大崎市古川の斉藤武康さん(72)の水田では、被害は主力のコシヒカリ系品種「たきたて」に集中。収穫したコメの一部に、食害で変色した米粒が混じった。20年来、一度もなかったことだった。
「暑さで虫を呼ぶ何かが出たのか…。味は問題ないが、見た目が悪いためにお客さんから苦情が来る」。収穫作業に並行して、商品に添える「おわび状」の準備をしている。