コラム・断】ますます凍りつく中国発言

さる4月12日は、めずらしく午前中からTVの前に陣取っていた。米大リーグの松坂投手とイチローの対決を楽しみ、途中で、来日した温家宝首相の国会演説を聞いて嘆息したりした。
 両国の「戦略的互恵関係」をアピールしたとかいうこの演説に、日本の国会議員たちは立ち上がって拍手喝采(かっさい)であった。最近は音楽会や芝居でも、日本人はこのスタンディングオベーションとやらをよくやるようになったので、欧米化された議員サンたちがまねするのも結構だが、何をそんなに喝采するのか、首をひねってしまう。
 温首相は今回の訪問を「氷をとかす旅」といったが、「氷」とは要するに、中国に入るジャパンマネーが凍っているということだ。小泉政権のときに反日運動やらヤスクニ批判やらを仕掛けた中国に対して、日本はODAを削減し、日本企業の投資も激減した。1980年から中国の5カ年計画に合わせて、日本は5兆円とも6兆円ともいわれる経済援助をしてきた。“日中友好”といえば聞こえがいいが、これはまさに“援助交際”の最たるものである。
 中国へのODAを戦争賠償金の代わりと考えるならば、これもトンデモ話である。南京事件のプロパガンダ映画を、次々に世界中にばらまいていることを、北京政府が知らぬわけではあるまい。
 温首相演説と同じ日に、東シナ海のガス田開発について中国側は、日本の主張する中間線を無視すると宣言し、厄介な論争は「棚上げしよう」といってのけた。「棚上げ」大賛成。中国への“援助交際”も(今度は「環境保護支援」というらしいが)、ぜひとも棚上げしたまま冷凍保存しましょう。(文芸評論家・富岡幸一郎)

コメント

タイトルとURLをコピーしました