新型コロナウイルスの感染拡大に金融市場の動揺が止まらない。市場の暴落に地方銀行は青ざめている。
「人口減少に日本銀行のマイナス金利政策が加わり、地銀の収益環境は悪化の一途をたどっている。そこに今回のコロナショックが直撃し、経営危機に陥る地銀が出るだろうと懸念されています」(市場関係者)
どこが危ないのか。その指標の1つが、運用証券投資の多寡を示す「預証率(譲渡性預金を除く預金に対する有価証券の比率)」だ。
「預証率が高い銀行ほど打撃を受けて減損することになるでしょう。地元に有力な貸出先が少ない地銀は投資で収益を出しています。海外の高利回り社債などリスクの高い債権に投資しているところもある」(同前)
そこで、直近の2019年12月期決算から、各地銀の預証率を弾き出した。
すると、運用収益に頼る実情が浮かび上がった。預証率が40%を超えたのは、七十七(44%)、岩手(43%)、京都(42%)、富山第一(42%)、山梨中央(42%)、山陰合同(41%)、八十二(41%)、大分(41%)の計8行。30%台は15行あった。
「いずれも優良銀行と目されており、投資のリスク管理にも自信があるはず。しかし、今回はリーマン・ショックを超える事態であり、損失を回避するのは難しいだろう。すでに三菱UFJフィナンシャル・グループやみずほフィナンシャルグループは減損を発表しています」(同前)
マイナス金利の影響で「逆ざや」に陥る地銀も
さらに、マイナス金利の影響で、2期連続で運用利回りが調達利回りを下回る「逆ざや」に陥っているのが、福島、大東、筑波、東京スター、島根、福邦だ。その中で預証率が27%と高いのが、福島県郡山市に本店を構える大東である。
「福島県は他にトップの東邦と福島があり、過剰気味。福島は昨秋まで大東と同じ米資産運用会社が筆頭株主でしたが、業績低迷が著しく、『第4のメガバンク』を標榜するSBIホールディングスと資本業務提携を結んだ」(銀行アナリスト)
大東銀行はこう回答した。
「厳格なリスク管理に基づく運用を実践しております。東日本大震災時などに培ったノウハウをもとに、迅速で適切な経営支援活動を展開したいと考えております」
金融庁は「健全性にかかわる様々なデータを確認し、運用のモニタリングをしている」(幹部)という。検証をより強化し、地銀各行とトップ会談を始める予定だ。
「金融庁はシステム統合などを視野に入れ、自前主義の脱却を求める方針です。経営環境が厳しい東北や四国、九州で再編が進むはず」(前出・銀行アナリスト)
地銀再編の号砲が鳴る。