厚生労働省は、新型コロナウイルス禍などで生活が苦しくなった世帯に対する、家計の収支改善に向けた支援を主要な自治体の義務とする方針を固めた。コロナ禍で収入が減った世帯に無利子で生活費を貸す「特例貸付」の利用者らを対象とする。物価の高騰が続く中、家計簿の作成など継続的な支援が必要と判断した。来年の通常国会で生活困窮者自立支援法の改正を目指す。
コロナ禍での生活困窮世帯の支援を巡っては、緊急的に実施した特例貸付の貸付額が、2020年3月の開始以降、計約1兆4289億円(今年9月末現在)にのぼる。23年1月から返済が始まるが、返済期間が10年に及ぶケースもある。
国は住民税非課税世帯については、返済を免除できるようにしており、全国社会福祉協議会の調査(7~10月)では、1月から返済が始まる人の約3割が免除を申請していた。物価の高騰などで家計が改善しない人も少なくなく、今後、返済が困難になるケースの急増が懸念されている。
厚労省はこうした状況を踏まえ、中長期にわたる家計の改善に向け、自治体の職員らが継続的に助言する伴走型の支援が欠かせないと判断した。
生活困窮者自立支援法に基づく家計の改善支援は、都道府県や政令市など福祉事務所を設置している自治体が提供することになっているが、対象の約900自治体の約7割の実施にとどまっている。法改正で完全に義務化し、全国どこでも支援を受けられるようにする。
支援の対象は主に、特例貸付の利用者など困窮世帯を想定している。自治体や社会福祉協議会(社協)の職員らが、支援に同意した世帯主らの家計状況を確認し、家計簿の作成などを支援する。収入増につながる職探しや、支出を減らすために安い家賃の住宅への住み替えを助言する場合もある。生活苦で借金や税金の滞納を重ねる人には整理を促す。