コロナ禍で膨らんだ「基金」にようやくメス 有識者から批判殺到

新型コロナウイルス禍で膨張した国の基金にようやくメスが入った。防衛費や社会保障費の増加が避けられない中、政府には財政規律の緩みをただし、国民負担の増加に理解を求める狙いがあるとみられる。 【図解】基金になると…予算の裁量、甘い監視  見直しは「基金はコロナで水ぶくれした予算の象徴だ」と指摘してきた河野太郎行政改革担当相が主導。岸田文雄首相も1月の施政方針演説で基金見直しの推進を強調していた。  基金は本来、複数年度にわたり機動的な支出が求められるなど特別な事情がある場合に限って、例外的に認められるものだ。  ところが、コロナ禍は先行きが見えなかったこともあり、毎年度1兆円程度だった基金への予算措置が2020年度は11・4兆円に急増した。22年度も10・6兆円を記録。内閣官房によると、22年度末の全基金の残高は計16・6兆円に上り、コロナ禍前の19年度末(2・4兆円)の約7倍に膨れ上がった。  こうした状況から、23年11月に開かれた政府の「秋の行政事業レビュー」では有識者から基金のあり方に批判が殺到した。  コロナ禍を契機に、中小企業の事業転換を補助金によって後押しする経済産業省の「事業再構築促進基金」は、異なる複数の事業者が「フルーツサンド販売店の展開」という全く同じ内容の計画を提出し、採択されていた。さらにゴルフ、エステ、サウナに関する計画が多数含まれていることも判明。「日本経済の構造転換を促す」という補助金の趣旨に照らして疑問符が付く基金の運営が問題視され、外部の監視の目が届きにくい基金の問題点が浮き彫りになった。  一方、終了時期を定めない基金には国際通貨基金(IMF)も、今年2月の対日経済審査で「(年度ごとに国会が審議する)コントロールシステムの外に作られている」と指摘。「脆弱(ぜいじゃく)なガバナンス(統治)構造が歳出の非効率性をもたらし、予算の規律を低下させている」と警鐘を鳴らしていた。  政府はコロナの「5類」移行後に編成した23年度補正予算でも基金に計4・3兆円もの予算を追加した。半導体産業の支援に多くが充てられており、基金が適切に使われるかは今後も注視する必要がある。【山下貴史】

タイトルとURLをコピーしました