コロナ禍で飲食店休業、倉庫で眠る無数の生ビールだる 酒卸業界「ノックアウト寸前」

新型コロナウイルスの緊急事態宣言再延長で、酒類を提供する飲食店への休業要請が続くことになり、出荷元の業務用酒卸業界からも悲鳴が上がっている。例年より大幅に売り上げが落ちても、協力金の対象外。兵庫県東播地域の卸売業者では、倉庫に出荷できないままの生ビールのたるが積まれ、関係者は「ノックアウト寸前」と表情を曇らせる。(若林幹夫)

 創業70年の「松竹酒舗」(加古川市野口町坂元)は、東播地域を中心に姫路市や阪神間の居酒屋、スナック、バーなど約700店と取引する。今回の緊急事態宣言以降、ほとんどの酒類出荷がストップ。担当者は「業務用は壊滅的で売り上げも激減。物流担当社員を中心に週1回の勤務にしてもらっている」と実情を明かす。

 融資制度などを活用するが、「ボディーブローのように効いてくる。出口が見えない持久戦」。感染拡大のたびに酒類提供の自粛が求められる状況に、「一人で黙って飲むバーや感染対策をしている店もある。一律にアルコールが駄目じゃないのに」とこぼす。

 全国の地酒を取りそろえる「お酒のにしうみ」(同市加古川町木村)も、卸先の約500店への販売について「全滅に近い」。同市内で小売り2店舗を直営するが、カクテルのリキュール類など業務用が多く、「元々店の経営者がよく買いにきていたので大幅に減った」と話す。

 毎年、花見シーズンにはビールサーバーのレンタルが人気だったが、今年の注文はゼロ。「東京五輪もあるし、感染防止への協力は当たり前だけど、あらゆる納品業者が厳しくなっている。もう耐えるしかない」

 酒類業界全体の苦境に、両社とも「飲食店には頑張ってほしい」とする。個人営業も同様の状況で、同市内で戦前から営業し、小売店舗も構える卸業者は「家で飲む機会が増えたといっても、一般の消費者はスーパーやディスカウント店に流れる。このままだと卸業が成立しなくなってしまう」と訴えた。

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