コロナ自粛でも「落書き」あいつぐ 専門家「治安悪化の兆候の一つ」「迅速な対処を」

新型コロナウイルス感染防止にともなう外出自粛の影響で、繁華街の人通りが減る中、建物などに落書きする行為があとを絶たない。落書きは、美観を損ねるだけでなく、凶悪犯罪の誘発にもつながるとされる。専門家は「迅速に対処する必要がある」と警鐘を鳴らしている。

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●「SHIBUYA109」のシャッターに落書き

東京・渋谷の道玄坂で4月27日、臨時休業中のファッションビル「SHIBUYA109」のシャッターにスプレーで落書きされるという事件があった。

この事件について、警視庁は広報発表していないが、自称デザイナーの男性が建造物損壊の疑いで現行犯逮捕されたと報じられている。

毎日新聞によると、男性は「人が減って、目立ちにくいと思った」などと話したという。

●全国的に「落書き事件」が発生している

緊急事態宣言下でも、こうした「落書き事件」は全国的に発生している。次のような報道があった。

兵庫県三田市では、市立有馬富士森林公園内のヒノキの幹に、油性塗料による落書きが見つかった(4月20日)。県警三田署が器物損壊の疑いで捜査している。

大分県臼杵市では、末広ダム管理棟の壁面に、イラストのような絵や文字など、複数の落書きがみつかった(4月27日)。スプレーで描いた悪質ないたずらだとみられている。

島根県松江市では、県が管理する「くにびき大橋」の橋脚にイラストを落書きしたとして、男性3人が、器物損壊の疑いで県警に逮捕された(5月上旬)。

なお、他人の建物に落書きした場合、建造物損壊罪(5年以下の懲役)が、建物でない場合は、器物損壊罪(3年以下の懲役またた30万円以下の罰金もしくは科料)が成立する可能性がある。

●地域活動家「落書きのペースは減っている」

上記以外にも、新型コロナ感染者に対する差別的・誹謗中傷的な落書きが各地でみつかっている。

東京・大田区で落書き消去活動をおこなっている「落書きバスターズ」によると、外出自粛の影響で、ふだんよりもペースは落ちているが、それでも新しい落書きがあとを絶たないという。

警視庁によると、落書きに関する統計データはなく、増加傾向などはわからないということだった。一方、落書き問題にくわしい東京都市大学の小林茂雄教授は、落書きをそのまま放置しておく危険性を指摘する。

小林教授は弁護士ドットコムニュースの取材に次のように回答した。

●「落書きは治安が悪化する際の兆候」

――緊急事態宣言(コロナ)下で、落書きする心理はどのようなものか?

緊急事態宣言下で落書きが増加しているかどうかは、私も情報がなくわかりません。外出が自粛されていることから、それほど増えているとは考えにくいですが、心理としては次のようなものがあると考えられます。

・抑圧されることによるストレスや社会状況への不安によって暴力行為や犯罪が起こりやすくなる

・公園や店舗やイベントがクローズされて、活動する場所や方法がない

・落書きは都市部の店舗のシャッターに非常に書かれやすい。店舗のシャッターが閉まった状態が多いため、さらに書かれやすくなることと、また書かれた落書きが(シャッターを上げないために)通常よりも目立つ

――落書きは放置しておくとどういう影響があるのか?

落書きは治安が悪化する際の兆候の一つです。はじめにマナー違反や反道徳行為、軽微な犯罪などが起こって、徐々に犯罪が凶悪化していきます。

しかし、ほかの軽微な犯罪は、その現場を目撃しないと認知できるわけではないが、落書きは消されない限り、常に(その場所を汚したという)跡が残ります。

そのため、ほかの犯罪よりも別の犯罪に接続しやすい(刺激しやすい)と思われます。またコロナ状況下では、落書きされても住民などが集まって消去する作業は難しく、消去されずに放置されているものと考えられます。

――今後、落書きとどう向きあっていくか?

都市の中での物理的な落書きやいたずらは、ネット上での誹謗中傷や、Zoom爆弾などへ形態を変えています。ネット上での落書き的なものが、今後もタイプを変えて増えていくだろうと思われます。

都市の物理的な落書きについては、落書きされた際に、できるだけ迅速に、人数を掛けずに消去する対策を取る必要があります。特に、不安な心理からくる差別的・誹謗中傷系の落書きは増加する可能性があり、それに対して迅速に対処する必要があります。

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