4度目の緊急事態宣言入った東京だが、人流抑制の効果は期待できなさそうだ。AERA 2021年7月26日号で、宣言の自粛効果は「1度しか利かない」と専門家は指摘する。
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57日に及んだ3度目の緊急事態宣言が解除されてから、わずか22日後の再発出だった。7月12日、東京都は4度目となる緊急事態宣言期間に突入。8月22日まで、計42日間の長丁場だ。五輪開会式を挟む7月の4連休も、お盆休みも、子どもたちの夏休みの大半も緊急事態宣言下に置かれることとなる。
だが、感染拡大防止の「肝」とされる人流抑制に、宣言はもはや役に立たないかもしれない。
国内の旅行需要回復は、緊急事態宣言発出が決まってもなお堅調だ。全日空では緊急事態宣言発出が決まる前の段階で、7月22~25日の4連休に前年同期比2倍の国内線利用者を見込み、連休初日と最終日、さらにお盆休みのピーク日には全国で1日10万人が利用する見通しを示していた。緊急事態宣言の影響は「精査中」としているが、宣言発出が決まった8~11日の4日間でお盆シーズンの国内線予約数は約2万人増えたという。
街の声を聞いても、「宣言不発」が顕著に表れている。宣言初日、7月12日の新宿・歌舞伎町の夜は、これまでと変わらぬ明るさだった。都では酒類やカラオケ設備を提供する飲食店には休業を要請。提供をやめる場合には午後8時までの時短営業を求めているが、夜11時を回っても多くの店のネオンが輝いている。客引きの女性によると「先週とあまり変わっていない」。
■自粛がイベントだった
すでにおなじみの光景となった「路上飲み」をするグループもあちこちにいる。歌舞伎町一番街に面したシネシティ広場(旧コマ劇場前広場)では、計120人ほどがたむろしていた。なかには奇声をあげながら缶チューハイを一気飲みしたり、霧吹きのように口から酒を噴き出したりして大笑いしている10人ほどのグループもいる。
20代の男女4人に話を聞くと、3人は緊急事態宣言が出ていることすら知らなかった。唯一「知っている」と答えた大学生の女性もこう話す。
「『またか』としか思わない。今年の初めごろまでは自粛してストレスをためていたけれど、もう気にならなくなりました。宣言が出たからといって何か行動を変えることはないですね」
慶応義塾大学大学院の小幡績准教授(行動ファイナンス)は、緊急事態宣言にもはや人流を抑制する効果はないとして、こう指摘する。
「昨年4月、最初の宣言のときは未知のウイルスに対する『恐怖』から皆が行動を自粛しました。けれど、恐怖で行動を支配するのは『ジョーカー』で1度しか使えない。2度目からは『脅し』が利かなくなって自粛効果がなくなりました」
さらに、最初の宣言時には若者が自粛を「イベント」として消費した側面もあるという。
「『コロナ自粛』がいわば目新しいトレンドで、若者もイベントとして積極的に参加した。ただ、2度、3度と繰り返すうちに関心を持たなくなりました」(小幡准教授)
(編集部・川口穣)