厚生労働省は18日、新型コロナウイルス感染症の診療にあたる医療従事者に活用してもらう「診療の手引き」の改訂版を公表した。肺の血管を塞ぎ呼吸不全を引き起こす血栓症のリスクがあることや、重症度の分類を新たに盛り込み、症状に応じた診療のポイントを解説している。
国内外で蓄積した知見を基に、3月17日発行の第1版を更新した。新型コロナ感染症の合併症として血栓症を挙げ、軽症患者が経過観察中に突然死したケースでも血栓症との関連が示唆されるとして、注意を促している。血栓症の進み具合を判定する血液中の「Dダイマー」は、重症化を予測する指標の一つとした。症状が悪化する前に血液検査を行い、正常値を上回っている場合は血栓を溶かす抗凝固薬の投与を勧めた。
手引の作成に携わった加藤康幸・国際医療福祉大教授は「肺に酸素を送る肺動脈が詰まると、酸素が取り込めなくなってしまう。血栓を防ぐことが重症化防止につながる」と語った。
また重症度について、軽症▽中等症Ⅰ(呼吸不全なし)▽中等症Ⅱ(呼吸不全あり)▽重症――の四つに分類した。
軽症の場合、ほとんどが自然に回復するが、高齢者や心不全、糖尿病などの基礎疾患がある患者は、悪化する恐れがあるため入院が必要とした。中等症Ⅰは息切れや画像診断で肺炎が認められる人で、入院し血液中の酸素濃度や呼吸、脈拍などを管理する。
中等症Ⅱは酸素投与が必要で、人工呼吸器や人工心肺装置「ECMO(エクモ)」などの設備が整う医療機関への転院を検討するよう求めている。重症は肺炎の症状を二つに分け、症状の重さに応じた人工呼吸器やECMOの使い方を示した。
新型コロナ感染症は、発症から1週間前後で急激に悪化するケースがある。重症化を示す指標として、Dダイマーのほか、炎症反応を示すCRP値の上昇やリンパ球の減少などを挙げた。【金秀蓮】