新型コロナウイルスの影響が緩和され、宮城県内で観光需要の回復が続いている。観光地では国内旅行を楽しむ人たちに加え、インバウンド(訪日客)の姿も目立つ。新型コロナが感染症法上の位置付けが5類に移行し、8日で1カ月。関係者は祭りやイベントが数多く開催される夏場以降の本格回復に期待を寄せる。
夏場以降の本格回復に期待
仙台市若林区のANAホリデイ・イン仙台では、5月の宿泊客数がコロナ禍前の2019年同期の9割まで回復した。新型コロナの5類移行を機に、国内のビジネス客や、台湾を中心としたアジア圏からの団体客によって底上げされたという。
イベントやコンサートが復活している影響で、6月以降の個人の宿泊予約は19年同期比で3割増と好調に推移する。8月には4年ぶりの通常開催となる仙台七夕まつりがあり、小竹聖一総支配人(48)は「大勢の観光客が仙台に足を運ぶイベントになる」とレジャー層の増加を待望する。
仙台空港では、国内線と国際線を合わせた利用者数が19年度の9割程度まで戻っている。空港を運営する仙台国際空港の広報担当者は「5類移行によって長距離移動への心理的ハードルが下がり、空港に活気が戻ってきた」と喜ぶ。
被災地にも回復の兆し
訪日客の回復ぶりに比べ、海外旅行に出かける利用客は円安や行動制限の習慣化で伸び悩む。「本格的な回復は夏以降になるのではないか」と担当者は予測する。
訪日客は県内各地で増加傾向にある。蔵王町観光物産協会によると、こけしの絵付け体験でみやぎ蔵王こけし館を訪れる訪日客は、台湾を中心に感染拡大前の7、8割まで回復した。門脇次男会長(65)は「訪日客は毎日のように来ていて7月は3000人の予約がある。かなりの勢いで回復している」と話す。
東日本大震災の被災地にも回復の兆しがある。気仙沼観光推進機構(気仙沼市)が認定する観光ガイド団体「KOMPASS(コンパス)」によると、市内でも訪日客は増え始め、米国人が市東日本大震災遺構・伝承館を訪れたり、市魚市場を見学したりしている。
リーダーの加藤英一さん(67)は「東京では味わえない気仙沼の魅力を発信し、外国人観光客誘致に力を入れたい」と語る。
大崎市の鳴子温泉地区でも訪日客を受け入れる準備が進む。鳴子温泉旅館組合常任理事で扇屋社長の大崎隆光さん(44)は「外国人は日本の伝統や景色が好きな人が多い。秋の紅葉や9月の全国こけし祭りに期待したい」と述べた。