コンビニオーナーの苦しい実態が経産省の調査で明らかに

経済産業省は「新たなコンビニのあり方検討会」を6月から定期的に開催している。これはコンビニが抱えている課題や今後の方向性を議論し、持続可能な成長をするために必要な方策などを検討する場である。

 11月5日には3回目の会合が開催されたが、その場で提出された資料から、コンビニのオーナーが直面している深刻な課題がいくつも明らかになった。「オーナーアンケート調査」と「オーナーヒアリング調査」からその実態を明らかにしていく。

●高齢化が進んでいる

 まずは、オーナーアンケート調査を見てみよう。これは、8月5~30日にかけて郵送アンケートの方式で行われたもので、3645人から回答を得た。

 オーナーの年齢で最も多いのは「50歳以上60歳未満」(35%)で、「40歳以上50歳未満」(28%)、「60歳以上70歳未満」(21%)、「30歳以上40歳未満」(9%)、と続いている。「70歳以上」(4%)とあわせると、50歳以上が60%を占めている。

 加盟年数で最も多いのは「10年以上20年未満」(33%)で、「20年以上」(26%)、「5年以上10年未満」(21%)と続く。コンビニが成熟産業になる中で、加盟年数が長い店舗が多くなり、結果的にオーナーの高齢化が進んでいるといえそうだ。

 経営店舗数で最も多いのは「1店舗」(59%)で、「2店舗」(22%)、「3~4店舗」(10%)、「5~10店舗」(4%)と続く。一般的に、他店舗経営をするとオーナーの負担は軽くなるとされている。そのため、他店舗経営を推奨している大手チェーンもあるが、1店舗だけというオーナーはまだまだ多くいるようだ。

●年収500万円未満が半数近い

 オーナーの年収はどうなっているのだろうか。最も多いのは「250万円以上500万円未満」(32%)で、「500万円以上750万円未満」(25%)、「250万円未満」(15%)、「750万円以上1000万円未満」(13%)、「1000万円以上」(8%)と続く。年収500万円未満が全体の約50%を占めている。

 1日の店頭対応時間で最も多いのは「6時間以上12時間未満」(50%)で、「12時間以上」(29%)、「6時間未満」(14%)と続く。「店頭対応していない」は5%だった。

 週休の日数で最も多いのが「週1日未満」(66%)で、「週1日」(19%)、「週2日以上」(7%)と続く。

 こうしてみると、週に1度休めるかどうかという状況で、自ら店頭に立ち続けるオーナーが少なくないことが容易に想像できる。

●深夜勤務が当たり前で休暇は27年1度もない

 「深夜勤務は当たり前で休暇は27年1度もない。高齢のため24時間定休日なしの経営が一番の負担である」「深夜勤務そのものが大きな負担」「休暇は週1回取得できればラッキー程度と考えている」――オーナーアンケート調査からは、休暇が思うように取れないオーナーの“悲鳴”が聞こえてくる。同調査では、従業員の確保に関する質問項目もあるのだが「人手不足と感じたことはない」という回答は少数派だった。

 同様の傾向は、「オーナーヒアリング調査」でも見られる。この調査は8月21日~9月17日にかけて東京や大阪などの主要都市で行われた。各地域に設けられた会場で、1回2時間近くかけて聞き取り調査が行われ、計121人が参加した。

 この調査でも「1年に1日も休みがないオーナーさんが何人もいる」「風邪をひいても6時間後には治して店に出ないといけない」といった回答が目立つ。オーナー家族も長時間労働に苦しんでおり「夫婦と高校生の子どもが働けるが、子どもが夏休みで1日、休んでいたかなというような状態で働いている」という回答もあった。

●ドラッグストアに苦しめられる

 オーナーを苦しめているのは長時間労働だけではない。ドラッグストアやスーパーといった競合の出現で、売り上げが下がるケースもあるようだ。

 オーナーアンケート調査では「ドラッグストアが比較的近い所に2年前にオープンして売り上げが低下」「売り上げは減少。原因は商圏の人口減少、競合との食い合い、ドラッグストアなどの24時間化。今後はさらに厳しくなると思う」といった回答があった。

 また、オーナーヒアリング調査にもドラッグストアを脅威に感じている回答が目立った。例えば「私の地域はドラッグストアが多い。ドラッグストアだらけ。だから、消費者は使い分ける。ドラッグストアで安いものを買って、コンビニにしかないものはコンビニで買う」「私が一番怖いのは、ドラッグストアの業界(中略)。コンビニと同じような形で経営されていて、同じものでもコンビニと比べて値段が安い」といった回答があった。急速に店舗数を増やしているドラッグストアが、コンビニの脅威になっているようだ。同調査では、競合として「スーパー」「ミニスーパー」「他チェーンのコンビニ」といった回答も挙げられていた。

 今回紹介したのは、オーナーアンケート調査とオーナーヒアリング調査で公開された内容のほんの一部である。調査結果を見ると、万引き対策、増え続けるサービス、発注業務などがオーナーの負担になっている実態が明らかになった。

 こういったせいか、オーナーアンケート調査では、事業承継について「子どもに店を継がせようとは思わない」「後継者に継がせる気がない。こんな、体力的にも精神的にも辛い仕事をさせられない」といった否定的な意見が寄せられている。

 社会のインフラとして定着し、日々の生活になくてはならない存在になったコンビニ。だが、担い手がいなくなってしまっては、持続性が危ぶまれる。

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