新型コロナウイルス感染が拡大する中、金沢市内のコンビニチェーン「ファミリーマート」の店主が、「県外ナンバー」の男性客に対して、カッターナイフを片手に退去を求めるというトラブルがあった。男性客はすでに、店主側の謝罪を受け入れており、告訴も損害賠償請求もするつもりはないが、一方で、コンビニ本社の対応には受け入れがたいものがあると述べる。●男性の車は県外ナンバーだった
客の男性によると、次のようなトラブルだった。
男性は7月16日未明、買い物をするため、金沢市内のファミリーマートの駐車場に車を停めた。すると、店主が店から出てきて、男性に車のエンジンを止めるよう言った。
その際、店主は、男性の車が県外ナンバーであることに気づいて、「金沢ナンバーじゃないとまわりからいろいろ言われてしまう」として退去を求めた。
男性は富山県内在住だったが、車のナンバーはそれ以前に住んでいた関西地域のもの(「なにわ」ナンバー)だった。
男性は抗議したうえで、買い物をしようと店内に入ったところ、店主がバックヤードから刃が出たままのカッターナイフを握って現れたという。●コンビニ本部の「不誠実さ」に納得できず
男性はその日のうちに、ファミリーマートの公式ホームページから苦情を申し立てた。翌7月17日、店主とファミマ側の社員が男性に謝罪した。
「店主は何が問題だったのか、よく理解したうえで謝っていただきましたし、現場担当の社員さんも非常に丁寧にトラブルの処理にあたってくれました」(男性)
男性は、現場レベルの謝罪は受け入れることした。しかし、ファミリーマート本社から届いた書面には納得がいかず、そちらは受け入れていないという。
「今回のトラブルは、コロナ差別なので、どこでも同じようなことが起こりうると思います。どのように対応するのか、本社としての見解と再発防止策を聞きたかったのですが、十分な回答が得られませんでした。
ある意味で、店主もコロナの被害者です。コロナの恐怖が煽られている中、他府県の客にどう対応して良いかわからないような状況です。だからこそ、本来なら、コンビニ本社が、加盟店や店主が安心して接客できるような指針を示すべきでしょう」(男性)
カッターナイフを持ち出した店主の行為は刑事事件にもなりうるようなものだったが、男性は、刑事告訴したり、店主の処分を求めているわけではない。それ以上に本社の「不誠実さ」には納得できないとのことだ。●「フランチャイザーとしての社会的責任を果たすべき」
男性とファミリーマート側とのやり取りにオンラインで同席した鐘ケ江啓司弁護士は、弁護士ドットコムニュースの取材に次のようにコメントした。
「ファミリーマート本社は、事態の重大さを認識していないように思えます。この事件は、加盟店が、コロナウイルスを理由に地域差別をして、カッターナイフの刃を見せながら退去を求めたという違法性の高い事案です。本部としての見解と、再発防止策を公表すべきです。現時点では、ファミリーマート本社はフランチャイザーとしての社会的責任を果たしていないと言わざるを得ません」