コーヒーカルチャーの先端、メルボルンで見つけた「7つのキーワード」

「肥沃な火山灰土壌で栽培され」「フルーティでとくにベリーのような香り」を放ち、「適度な酸味」と「ふくよかな甘み」……と聞けばワインのテイスティングコメントのようにですが、これ実はみなコーヒーを評したもの。

喫茶店に入り「ホット」と一言いえばコーヒーが出てきた時代とは異なり、いまはコーヒーも多様化し、その楽しみ方も進化を遂げています。そのコーヒーの最前線を楽しみたくて、オーストラリアはメルボルンへ飛んでいきました。

メルボルンはコーヒーカルチャーの先端

なぜメルボルンか? オーストラリアは先住民族であるアボリジニのほか、イギリス人などヨーロッパ系の移民で形成されている国ですが、とくにメルボルンはイタリア、ギリシャからの移民が多く、独自なコーヒー文化が古くから醸成されてきました。

その証に、あのスターバックスコーヒーがメルボルンの中心エリアにはわずか6軒しかない、といえば、メルボルニアン(メルボルンっ子)がいかに独自のコーヒーカルチャーを愛しているか、おわかりいただけるでしょう。そしてそのコーヒーカルチャーは世界のカフェシーンを牽引していくものでもあります。ここではその魅力をメルボルンで出会った7つのキーワードでご紹介しましょう。

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1800年代の建物とモダンな建築が融合するメルボルンCBD(セントラル・ビジネス・ディストリクト=中心エリア)。

1. サードウエーブ

日本でも2015年にブルーボトルコーヒーがオークランド(米国)から上陸した際、「サードウエーブ」という言葉がしきりに使われました。メルボルンのカフェも主流はこのサードウエーブ。

文字通り、第三の波という意味ですが、この場合の第一波はコーヒー豆の大量生産・流通が発達してコーヒーが一般家庭に普及した19世紀後半~20世紀初頭、そして第二波はスターバックスに代表されるシアトル系コーヒーチェーンの台頭により、ディープローストのコーヒーが流行った1970〜90年代を指しています。

そしてサードウエーブとは2000年代に生まれた高品質な豆によるこだわりのコーヒーを楽しむスタイルの台頭ということなのですが、具体的にはどんなことなのか、メルボルンにおけるサードウエーブコーヒーの筆頭格といわれる人気カフェ「ST.Ali」を訪ねました。

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ST.Aliは中南米、アフリカ、アジアから最良のコーヒー豆を調達し、流通経路の開発や梱包の仕方に至るまでイノベーションをもたらしたメルボルンコーヒーカルチャーの旗手。https://stali.com.au/

2. スペシャリティコーヒー

サードウエーブの特徴はまず豆にこだわること。ST.Aliで提供されているのはスペシャリティコーヒーです。スペシャリティコーヒーとは生産地できちんと管理された環境のもと栽培・収穫されたコーヒー豆を指し、国際品評会である程度の基準を満たしているものを指しています。

3. シングルオリジン

そしてスペシャリティコーヒーの多くがシングルオリジン。つまり、ブレンドせずに単一産地の特色が前面に押し出されたタイプ。ケニア、ジャマイカなど産地ごとに味わいや香りが異なりますが、最近では栽培した農園ごとに区分され、さらに「マイクロロット」といって農園のブロックでカテゴライズされることもあるんだそう。この辺り、ワインのクリュ(畑)にも似て、ますます複雑化しています。

4. ウオッシュド or ナチュラル?

さらに「ST.Ali」で聞かれた質問がこちら。豆を洗う、とはピンときませんでしたが、コーヒーの実を収穫後、コーヒー豆を取り出す際に水で洗い流すのがウオッシュド。洗わず、果実ごと乾燥させてから豆を取り出すのがナチュラルなのだそうです。一般にウオッシュドが雑味が少なくすっきり、ナチュラルは果実感や甘味が強く、コクのあるタイプに仕上がるのだとか。

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メルボルンの台所と称される「クイーン・ビクトリア・マーケット」内コーヒー豆の専門店 「McIvers Coffee & Tea Merchants」にて。https://www.mcivers.melbourne/

5. 浅煎りで自家焙煎

そんな豆を深くローストしてはデリケートな味わいの違いがわからなくなってしまいますから、いまのコーヒートレンドは断然浅煎り。メルボルン最大のマーケットであり、多くの食料品店が軒を並べる「クイーン・ビクトリア・マーケット」のコーヒー豆専門店で、「浅煎りでなにかおすすめありますか」と尋ねたところ、怪訝な表情で「うちの豆はみんな浅煎りよ」と返されました。

なるほど、見れば色もみな薄いですね。おまけにオーガニックという表記のものも多数。

浅煎りの特徴としては苦みが少なく、さわやかな酸味を感じられるようなものが多いようです。またその豆を自家焙煎するのもいまどきの潮流でして、「ST.Ali」も、後述する「Market Lane Coffee」も自家ロースターを備えています。気になるカフェがあったらロースターがあるかチェックしてみてもよいかも。

6. ハンドドリップ

さて、そんなコーヒーをどう飲むか。まずは最近ポピュラーなのがこのハンドドリップ。一定以上の年齢の方には懐かしさを感じさせるこの淹れ方が、いままたトレンドとなっています。挽いたコーヒーをフィルターに入れ、お湯を注ぐにはさまざまな流儀があるようで、メルボルン市内の人気カフェ「Market Lane Coffee」では最初に真ん中に注ぎ壁を作るのがコツのようでした。

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メルボルン市内に6つのカフェとコーヒー豆の卸も手掛ける「Market Lane Coffee」。www.marketlane.com.au

7. フラットホワイト

最後はグローバルなコーヒートレンドというより、オーストラリア発のキーワードである「フラットホワイト」。これはメルボルンでは定番の飲み方ですが、最近東京のカフェにも輸入されており(といってもまだまだ本式にはかないません)、今後流行りそうな気配を見せています。

「フラットホワイト」とはつまり、エスプレッソにスチームミルクを加え、上に少量のフォームミルクをのせたカフェラテに似ている飲み方。ラテに比べればミルクが少なく、よりきめ細かい印象があります。また、同じくエスプレッソをお湯でのばしたものを「ロングブラック」と呼ぶのがオージー流。エスプレッソ、カプチーノ、マキアートなどイタリア語由来のカフェトレンドも多くありますが、今年は「フラットホワイト」、来るんじゃないかしら。

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