インターネット通販大手のアマゾンジャパン(東京・渋谷)は27日、来年3月に仙台でコールセンターを開設すると発表した。記者会見したジャスパー・チャン社長は「優秀な人材を集めて良質なサービスを提供したい」と話し、東北最大の都市の人材供給力が進出の決め手になったと指摘した。東日本大震災の被災地では雇用情勢が厳しくなっており、復興支援や人材確保などの観点から企業のコールセンター進出が相次いでいる。
アマゾンは仙台市中心部の「仙台トラストタワー」に顧客のメールや電話の問い合わせに応える「カスタマーサービスセンター」を設ける。現地採用した人材を訓練し、来年3月に開業。初年度は数百人で稼働する。最大1000人まで雇用を増やす。札幌市にも数百人が勤務する同様の施設がある。
仙台市の奥山恵美子市長は「1989年に政令指定都市に移行してから最大規模を雇用する企業の進出だ」と歓迎した。
アマゾンは2000年の日本参入時は書籍だけを扱っていたが、衣料や食品に対象を広げた。現在の取扱商品数は2000万点に上り、顧客の問い合わせも多岐にわたっている。チャン社長は「顧客の要望に迅速かつ丁寧に対応する体制を整える必要がある」と強調した。
アマゾンが仙台進出を決定した理由についてアマゾンジャパンの物流子会社、アマゾンジャパン・ロジスティクス(千葉県市川市)のジェフ・ハヤシダ社長は「人材力が他の都市と比べて高かった」と指摘した。仙台は東北各地から人が集まっており、高等教育機関も多く優秀な人材を採用しやすい。東京と札幌の中間にあり、行き来がしやすい立地も優位だった。
加えて仙台市はコールセンターや企業の事務部門など都市型産業の誘致に力を入れている。進出企業に対し3~5年間分の固定資産税相当額を補助する制度があり、アマゾンにも適用される見込みだ。震災後にはクーポン共同購入サイトのグルーポン・ジャパン(東京・渋谷)のコールセンター誘致に成功した実績が出ている。
震災後に被災地では雇用問題が深刻になっており、仙台以外の都市でも企業がコールセンターを開設し雇用創出する動きが広がっている。ワタミは12年2月をめどに岩手県陸前高田市に宅配弁当の注文を受けるコールセンターを開設する予定。東京テレマーケティング(東京・豊島)が盛岡市、DIOジャパン(松山市)が宮城県登米市に事業所を設けるなど、東北以外が地盤の中小企業の進出も目立っている。