ゴールデン帯のアニメが消滅の危機? 民放キー局のアニメ枠の変化が明確に

現在、ゴールデンタイム(後7時~10時)に放送されるアニメ枠が消滅の危機に瀕している。木曜に放送されていたテレビ東京系の『ポケットモンスター サン&ムーン』と『BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS』が、10月より日曜夕方の新アニメ枠に“移動”。これにより平日に残されたアニメはテレビ朝日系『ドラえもん』(金曜午後7時~)と『クレヨンしんちゃん』(同7時30分)“のみ”に。「日本のTVアニメは衰退しているのか…?」と思いきや、アニメコンテンツの放送自体は逆に増えているという。高齢化&少子化社会、ライフスタイルの変化にともなって変わりゆくTVのアニメ枠の在り方とは?

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■80~90年代はTVアニメ黄金期、感想を翌日に“共有”するのが定番

「ゴールデンタイム」とは1日のうち午後7時~10時の3時間のことで、視聴率が高くなりやすいことから業界内で使われた用語だが、今では一般的に普及している。ちょうど職場や学校から帰宅する時間帯でもあり、在宅率が高い=視聴率が高くなるという法則が長らく成立していた中、さまざまなファミリー向けや子ども向けの番組が放送され、家族で笑い語り合い、翌日は学校や職場で話題にする…という楽しみ方をほぼ全国的に“共有”していたのである。

実際、ゴールデンタイムでは数多くのアニメ番組が放送されてきた。1980~90年代を見ても、フジテレビ系では『Dr.スランプ アラレちゃん』をはじめ、『ドラゴンボール』シリーズ、『北斗の拳』、『タッチ』、『ONE PIECE(現在は日曜9:30放送)』、『るろうに剣心』といった錚々たる人気アニメが並ぶ。国民的アニメ『サザエさん』は、定時の日曜6時30分枠以外に、毎週火曜の後7時から何と“再放送”されていたのだ。

テレビ朝日系でも地域によって放送時間は異なるものの、『ドラえもん』や『忍者ハットリくん』、『パーマン』といった一連の藤子不二雄作品を放送。日本テレビ系では『ガラスの仮面』、『キャッツ・アイ』、『美味しんぼ』、『YAWARA!』などが放映され、「フジテレビは(少年)ジャンプ系」、「テレビ朝日は藤子不二雄系の子ども向け」、「日本テレビはちょっと大人向け」といったような局ごとの“色分け”も何となくあった。

■アニメを見るのも一家団欒の時間、かつては「情操教育」的な役割も

振り返ってみると、作品の内容もバラエティに富んでいた。ゴールデンタイムに放送されるアニメともなると“本流中の本流”の超人気キャラクターが活躍していたが、週末の同枠になると『フランダースの犬』に代表される「世界名作劇場」(日曜後7時30分~)のような情操教育的なアニメも放送され、人気を博していた。

かつては、こうしたゴールデンタイムの番組を観ながら家族そろってご飯を食べる、という構図があった。しかし今では、塾や習いごとに通うなどして19時台に自宅にいる子どもが少なくなっている。2000年代に入ると、急激なネットの普及やゲームやスマートフォンなどデバイスの進化にともない、「家でテレビを観る」という習慣がますますなくなり、そうした感覚自体がもはや消えつつあると言ってもいいだろう。

■少子化と子供のライフスタイルの変化がアニメ枠の主軸にも影響

ゴールデンタイムにテレビの前に子どもがいないのなら、子ども向けのアニメを放送する意味はなくなる。となれば、先述のテレビ東京の『ポケモン』と『BORUTO』の移動にもうなずけるものがあるのだ。

実際、テレビ東京の押田裕一アニメ局長は、「生活環境、視聴環境が変化する中、『休日ゆっくり、家族一緒で』をコンセプトに新たなるスタートをきりたいと考えています」とコメントを出しており、たしかに平日の7時台よりは日曜6時台のほうが、家族で見る機会は増えるかもしれない。

しかしネットでは、「まる子を録画で、ポケモンはリアルタイムで見たい」「ポケモンの日曜放送は違和感がある」などの声もあり、同じ国民的アニメ『ちびまる子ちゃん』VS『ポケモン』という新たな構図が生れることに、新鮮な興味や刺激を感じている視聴者もいるようだ。このあたりは、自局の人気アニメを木曜ゴールデンから日曜夕方という“激戦区”にあえて引っ越しをさせるという、テレ東の真骨頂といったところか。

■今期スタートのアニメは55本! 主戦場はニチアサと深夜、新しい方程式の誕生でのアニメ枠の定着

こうしてアニメはゴールデンタイムからは消えつつあり、テレビ全体の視聴率自体も1980~90年代に比べれば半分ほどに落ち込んでいる。しかし現状、アニメ番組自体は増加傾向にあるという。これらの番組は、帰宅が遅い児童から若年層、20~50代の男性に合わせるかのように週末の午前中、そして深夜の時間帯のアニメ枠に集中しているようだ。

深夜のアニメ枠からは、『ちはやふる』(日本テレビ系)、『弱虫ペダル』(テレビ東京)、『ジョジョの奇妙な冒険』(TOKYO MX、他)、『東京喰種』(TOKYO MX)、『おそ松さん』(東京テレビ)、『ポプテピピック』(TOKYO MIX、他)、『けものフレンズ』(テレビ東京、他)等々のヒット作品も目立つ。また、「漫画→深夜アニメ→映画化(実写化含む)」といった方程式もできつつある。さらに『はたらく細胞』がTOKYO MXで放送されるなど、ローカル局でも再放送ではなくオリジナルでアニメを制作することが増えてきた。

日曜朝の時間帯、通称“ニチアサ”枠でも、テレビ朝日系の『プリキュア』シリーズは依然好調であり、テレビ東京系でも『若おかみは小学生!』がアニメ映画化され、大人にも支持され始めている。そして、NHK総合やEテレでは長年『カードキャプターさくら』を、『GIANT KILLING』や『ピアノの森』といった人気漫画のアニメ化、さらには『進撃の巨人(season3)』まで放送していたりするのだ。

実際、『機動戦士ガンダム』や『新世紀エヴァンゲリオン』といった伝説的アニメにしても再放送から火がついたわけで、今では深夜アニメが大ブレイクする例は後を絶たない。多種多様な視聴者層を許容するアニメ界だけに、『ポケモン』の移動にしても、初期ポケモンファン層が今は親になっていることを考えれば、「子どもと大人が一緒に楽しめるコンテンツ」として納まりはいい。

今や唯一残った『ドラえもん』と『クレヨンしんちゃん』がアニメのゴールデン枠“最後の砦”となるのか、それとも新たな定義におけるTVアニメの“逆襲”がこれからはじまるのか、注目したいところである。

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