ゴーン容疑者、ベッド部屋に移動 待遇改善 逮捕や起訴に納得せず

国内外に衝撃を与えた逮捕から3週間。日産自動車前会長、カルロス・ゴーン容疑者(64)らは起訴され、新たな容疑で再逮捕された。「救世主」とたたえられたカリスマ経営者は「刑事被告人」として法廷に立つことになる。【大久保昂、片平知宏】

 「うその自白をして自分の評判が下がるのは耐えられない」。関係者によると、ゴーン前会長は周囲にこう語り、逮捕や起訴に納得していないという。

 再逮捕で、東京・小菅の東京拘置所での勾留は少なくとも年末まで続く可能性が強まった。関係者によると、勾留途中で3畳の畳部屋から、やや広いベッドのある部屋に移された。風呂は週2回で、日々の運動時間も確保されているという。

 先月19日の逮捕以降、フランスやレバノンの大使らと相次いで面会。東京地検特捜部の検事による録音・録画付きの取り調べや接見以外の時間は、自身の事件を報じる英字新聞や、差し入れられた本を読んで過ごしている。逮捕直後は「(室内が)寒い」と不満を漏らしたが、体調は良好とされる。

 前代表取締役のグレッグ・ケリー容疑者(62)も連日、数時間の取り調べを受けている。接見した関係者が、米国にいる妻と連絡を取っていることを伝えると、安心した表情を見せたという。前代表取締役は首に持病があり、勾留後しびれが出始めたとして、弁護人は専門医の治療を受けられるよう地検に要望書を出した。

 日産関係者はどう受け止めているのか。ある関係者によると、前会長は「退任後報酬」の計画について、「高額報酬だと、従業員の労働意欲が下がると考えた」と特捜部に説明したとされる。日産の現役幹部は「今回の事件で社員の労働意欲がどれだけ下がったと思っているのか」と憤りを隠さない。

 1999年に仏ルノーから派遣され、大ナタを振るって日産を再建させた前会長。当時を知る元幹部は「長期政権で慢心していたのか。抜け目ない経営者だと思っていたが、起訴されるほどの証拠を残していたことのほうが驚きだ」と語った。

 特捜部は10日、法人としての日産も虚偽の有価証券報告書を提出した刑事責任があるとして起訴した。日産株主で、会社員の松田繁幸さん(32)=大阪府=は「役員報酬を正直に記載したとして、株主総会でゴーン氏の役員報酬を承認しない株主がいただろうか」と首をかしげる。ただ、会社資金が前会長の家族に流れたなどとする疑惑について「会社に順法体制の改善を求めたい」と注文した。

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