日産自動車の前会長、カルロス・ゴーン容疑者(64)の報酬過少記載事件で、逮捕容疑の2010~14年度分の約50億円とは別に、15~17年度の直近3年分でも報酬を約40億円過少に記載した疑いがあるとして、東京地検特捜部が金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)容疑でゴーン容疑者と、側近で前代表取締役のグレゴリー・ケリー容疑者(62)を再逮捕する方針を固めたことが分かった。過少記載に走った動機には、仏ルノーや仏政府の存在があったようだ。
再逮捕の方針は4日付の産経新聞が報じた。過少記載の総額は計8年間で計約90億円に上る見通しだ。特捜部は勾留期限の10日にも再逮捕するとみられる。ゴーン容疑者らの勾留をめぐっては、海外メディアなどから「長期すぎる」との批判が出ているが、再逮捕により最長で30日までの計40日間に延びる公算が大きくなった。
ゴーン容疑者は自らの高額報酬を後払いにする形で有価証券報告書に過少記載した理由について「高額報酬が開示されれば社員の士気が低下すると思った」と供述している。
逮捕前から、世界的な経営者として10億円を超える報酬をもらってもおかしくないと強調してきたゴーン容疑者だが、実は高額報酬批判は日本よりもフランスの方で強かった。
日産からもらっていた報酬は公表分だけで10億円近辺、記載していなかった分を含めると直近では総額25億円にものぼっているが、ルノーからの報酬は10~13年が約1億6000万円~約5億6000万円で推移し、14~17年は9億円近辺で頭打ちになっている。
仏世論は高額報酬への視線は極めて厳しく、16年4月のルノーの株主総会では株主の54%がゴーン容疑者の報酬案に反対票を投じた。取締役会は予定通りの報酬支払いを強行したが、マクロン経済相(現大統領)が見直しを要求、筆頭株主の仏政府がルノーへの介入を辞さない構えを示した。
仏政府からのルノーや日産への圧力に抵抗してきたとみられるゴーン容疑者だったが、ルノーの最高経営責任者(CEO)の任期延長をちらつかされると、ルノーと日産を統合させる方向に転じた。仏政府の思惑に従い、カネは日本からせしめていたという構図だ。