ゴーン容疑者が通った“焼鳥屋”の食べログ評価は? 庶民派を装うただのドケチ説

元妻の店も公私混同!?

検索エンジンに「カルロス・ゴーン」と「焼き鳥」の2語を入力すれば、いとも簡単に店名が表示される。よって、この稿では、店名を省略させていただく。11月19日に金融商品取引法違反の疑いでゴーン容疑者(64)が逮捕されてから、日本一有名な焼鳥屋になったのは間違いない。

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食べログの口コミを見てみると、事件前から「ゴーンが常連の店」として有名だったようだ。ランチに行列ができるのも「海外VIP効果」が指摘されたり、夜の「和風サラダ」はゴーン容疑者の好物で、「店内にサラダを食べるゴーン氏の写真あり」、「秘書もテイクアウトする」といった情報が書き込まれたりしている。

2017年5月の口コミによれば、ランチは焼鳥丼、雉子そぼろ丼の2種類だとされ、値段は共に税込み830円。

カルロス・ゴーン

夜も同年7月の口コミに「お通し350円」、「和風サラダ620円」、「レバー210円」、「チーズピー(註:チーズの入ったピーマンを豚肉で巻いた串)260円」、「銀杏230円」……の記述がある。我々庶民でも安心して楽しめる店なのは間違いない。

例えば、安倍晋三首相(64)とも懇意な某出版社の経営者が愛する新橋の京料理店は、食べログで星4.75、夜の予算は3万円以上と表示される。ネットで画像検索すれば、9万円や10万円といった高額の領収書がヒットする。一方、ゴーン容疑者が常連の焼き鳥店は星が3.48で、夜の予算は4000円以上という具合だ。領収書の画像は簡単には見つからない。

逮捕前に遡っても、ゴーン容疑者に「美食家」という報道は乏しい。むしろ「庶民派」の面が強調されてきた。

「麻布十番の焼肉店がテレビ番組で“ゴーンさんが常連の店”として紹介されたことがありましたが、こちらも値段が安いことで知られています。昼食は、社員食堂のラーメンか鮭定食、幕の内弁当を食べていたというのは有名な話。外国人社長で世界中を飛び回っていますから、日本の財界活動とも無縁です。あだ名が“セブン・イレブン”というのも、朝から晩まで仕事しているから。一種のワーカホリックで、高級料亭や銀座のクラブに姿を見せることも皆無でした」(経済担当記者)

内容は二転三転しているが、「役員報酬の約50億円を隠蔽した」と報じられている逮捕容疑と、焼き鳥店の価格帯が、全く釣り合わないのも不思議に思える。例えば夜のコースで最も高額なものは「◆ホットペッパー限定◆全7品 2h飲放付→\4,000」だ。

このコースに50億円を投じれば、約125万回、味わうことができる。定休日を無視して365日、毎日通ったとしても、3424年と数か月という気の遠くなる歳月が必要だ。現在の2018年から引くと、紀元前15世紀。日本は縄文時代の晩期、中国は殷王朝、古代エジプトなら「新王朝」(BC1570~BC1070年)という時代にあたる。

こうしたゴーン容疑者の“食生活”から、土光敏夫氏(1896~1988)を思い出した方もおられるだろう。

土光氏は1920年に東京高等工業学校(現・東京工業大学)を卒業し、東京石川島造船所(現・IHI)に入社。そして50年に社長に就任すると、経営危機に陥っていた同社の再建に成功する。

この業績を評価され、同じく経営難に苦しむ東京芝浦電気(現・東芝)の社長就任を要請される。65年に社長に就任し、同じように再建を成し遂げる。

名門企業2社の建て直しを果たしたことから、81年には政府の行財政改革を指揮する第二次臨時行政調査会の会長に就任した。

そしてNHKが「NHK特集 85歳の執念 行革の顔 土光敏夫」を82年7月に放送。妻と2人きりで摂る夕食のメニューが、メザシ、菜っ葉、味噌汁、軟らかく炊いた玄米という質素な内容が大反響を呼び、「メザシの土光さん」というあだ名で呼ばれるようになる。

素顔は単なるドケチ!?

土光氏と同じように、ゴーン容疑者も“コストカッター”として日産の再建を成し遂げた。ところが「ゴーン容疑者の食生活」を辿ってみると、少し気になる点がある。

ゴーン容疑者は84年、12歳年下のリタさんと結婚する。彼女はゴーン容疑者と同じくレバノンに生まれ、フランスの大学に進学した。そして、このリタ・ゴーンさんは、一時期、都内でレバノン料理のレストランを経営していたのだ。

先に見た焼鳥屋と同じように、こちらも「ゴーン夫人の店」として注目を集め、最盛期は代官山、元麻布、六本木の3店舗がオープンしていた。06年には月刊誌「メイプル」(現在は休刊)に「世界で一番ヘルシーなレバノン料理を召しあがれ! カルロス・ゴーン夫人、リタさんに学ぶ ゴーン家の食卓」という連載記事が掲載されたことがある。

レバノン料理は、ベジタリアン向け、ダイエット食として欧米では人気がある。ちなみに連載の最終回で紹介されたのは「モガラビア」という料理。モガラビアとはクスクスを大きくしたようなパスタで、レシピでは鶏の胸肉、ひよこ豆とスパイスを組みあわせており、確かにヘルシーなイメージだ。

ここまでは全く問題ない。リタさんとゴーン容疑者は15年に離婚してしまうのだが、普段のゴーン容疑者は自宅で美味しい母国の味を楽しんでいたのかもしれない。

しかし、07年8月号の月刊誌「ZAITEN」に掲載された「『ゴーン家の家訓』は売れ行き好調だが 日産も頭を痛めるカルロス・ゴーン夫人経営飲食店の『お家事情』」という記事には、以下のような記述がある。

〈レバノンで幼いころから戦乱にさらされながら生き延びて来たというリタさん、経営者としての自負心も強そうだ。とはいえ滞日中の夫人の移動などの身の回りのお世話はもとより、什器の搬入や食材の買い出しといった店に関することも含めて日産秘書部の社員が面倒をみているという〉

この公私混同ぶりは、今回の逮捕容疑を考えれば、まさに“原点”の可能性が出てくる。少なくとも現在、司法記者クラブを持つ大手メディアのリーク報道によると、「日産にプライベートも丸抱えさせた」という点に注目が集まっている。

ブラジルやレバノンに高級住宅を購入させ、ワイナリーを買い、会長用のビジネスジェットを家族に使わせていた――それはいずれも日産のカネ、という具合だ。「要するに、ただのドケチじゃないか」という報道も、テレビのワイドショーを中心に散見されるようになってきた。

確かにイメージと素顔が異なることは珍しくない。土光氏も、故郷の岡山県から送られてきた山海の珍味を自宅で楽しむことも多かったという。財界トップとして、高級料亭で食事をすることも珍しくはなかった。

だが経団連会長になってからも、通勤は公共のバスと電車を利用したのは事実だ。会長出張の慣例だった「前泊2泊3日」を「日帰り」に改めたという逸話でも知られている。

毎晩メザシだったというのは誇張であっても、やはり清貧の人だった。また母親が「橘学苑中学校・高等学校」の創設者だったことから、社長職などによる収入は相当額が学苑に寄付されていたという。

一方、ゴーン容疑者が「ワーカホリックな毎日で、食生活は庶民派」というイメージは、日本では事実なのかもしれない。

しかし16年に再婚した際、パリでは贅を尽くし、ヴェルサイユ宮殿を貸し切って「派手婚」を開いたことは話題となった。フランスやレバノン、アムステルダムでの生活はどうだったのだろうか。我々が驚愕する続報が伝えられても不思議はなさそうだ。

2018年11月26日 掲載

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