ゴーン被告“マネロン疑惑”に米当局が重大関心!

保釈中にレバノンに逃亡した日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告(65)=会社法違反(特別背任)罪などで起訴=をめぐり、米当局が動き出した。日本の検察関係者が「まるでマネーロンダリング(資金洗浄)」とする日産資金の還流疑惑について、米国在住の同被告の息子や娘から事情を聴いたのだ。日本の捜査当局は、ゴーン被告に加え、妻のキャロル・ナハス容疑者(53)=偽証容疑で逮捕状=についても国際刑事警察機構(ICPO)を通じて国際手配を要請した。卑劣な国外逃亡をきっかけに、各国の税務当局が「ゴーン・マネー」あぶり出しに本腰を入れる可能性が出てきた。

 米司法当局は昨年12月、東京地検特捜部の要請を受け、ゴーン被告の息子や娘から聴取を行った。

 ゴーン被告は日産の資金計約11億1000万円をオマーンの販売代理店に支出させ、半額を被告が実質的に保有するレバノンの投資会社「GFI」に送金させるなどし、日産に損害を与えた罪で起訴された。

 資金の一部は、妻のキャロル容疑者が代表を務める会社「BY」(英領バージン諸島)に流れ、クルーザー購入などに使われた可能性があるほか、息子が最高経営責任者(CEO)の投資会社「ショーグン」(米カリフォルニア州)に渡った疑いがもたれている。

 世界の富豪の資産を算出するブルームバーグ・ビリオネア指数によると、ゴーン被告の今年1月時点の純資産は約7000万ドル(約76億円)で、昨年1月時点の約1億2000万ドル(約130億円)から約40%目減りしたという。国外逃亡に使った資金や保釈保証金の没収などが響いた。

 ただ、ゴーン被告は以前から私的な資産運用にも積極的だったとされ、総資産は一時、2000億円以上あったとの見方もある。

 ジャーナリストの須田慎一郎氏は、一族の資産のありかとして、税率が過度に低いタックス・ヘイブン(租税回避地)を挙げ、「英領バージン諸島やケイマン諸島などのエリアを利用していたと考えられる」と話す。

 日産資金の還流には、タックス・ヘイブンに設立したペーパーカンパニーや友人の個人口座などが介在していたといい、検察関係者は「まるでマネロン」と表現する。

 須田氏は「米税務当局は犯罪捜査機関ではないので、特定の人間の資金の流れを決め打ちして追う手法はあまり取らない」としたうえで、「今回の会社法違反事件の資金の流れはマネロン的要素を多分に含んでいる。米税務当局はマネロンに厳しいスタンスで臨んでおり、不審な資金の滞留が見えてくれば(調査に)入る可能性もある」と語る。

とりわけ経済協力開発機構(OECD)加盟国の国税当局間では富裕層に目を光らせている。

 「個人名や金融機関名、口座に入っている金やその流れについて、かなり厳格に情報交換している。国税局査察部(マルサ)はある意味で検察の下請け機関になっており、ゴーン被告の逃亡をきっかけに調べることは十分にあり得る」といい、日米税務当局の連携も考えられると須田氏は分析する。

 金脈は掘り起こされるのか。

 ■妻も国際手配 ゴーン再会見で逃亡正当化

 日本の捜査当局は、ゴーン被告の妻、キャロル・ナハス容疑者についてもICPOを通じて国際手配を要請した。日本が身柄の引き渡しを前提とした国際手配を要請する例は多くなく、公判の成立が危ぶまれるなか、異例の措置となっている。

 ICPOの国際手配は目的別に9種類あり、それぞれ台紙の色が異なる。ゴーン被告が受けたのは身柄引き渡しなどのための所在の特定や拘束を求める「レッドノーティス(赤手配)」だ。

 ただ、国際手配制度は国際的な逮捕状ではない。加盟国に身柄を拘束する義務はない。

 日本の捜査当局が、ゴーン被告ら夫妻に相次いで適用した国際手配の意義について、警察庁関係者は「移動の自由の抑制」をあげる。

 国籍国以外の第三国へ渡航すれば、身柄を拘束される可能性があるからだ。そこでは、自国民不引渡の原則が働かず、身柄引き渡し請求に道が開ける。

 こうしたなか、ゴーン被告は10日、レバノンの首都ベイルートで、改めて日本メディアの代表取材に応じた。

 「すべての罪状は根拠がない」「日本では正義を与えられなかった」などと国外逃亡を正当化したが、主張を裏付けるような客観的事実は語らなかった。

 注目の逃亡方法は、音響機器用の箱に隠れて、関西空港からプライベートジェット機で逃げたと伝えられるが、ゴーン被告は「説明するつもりはない」「合法的に出国したとは一言も言っていない」などと語った。

 8日の記者会見で、大半の日本メディアの参加を拒んだことについては「150人分の場所しかなかった。収容できるようにメディアを選別しただけだ」と釈明した。

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