2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会のHPがサイバー攻撃された問題。続発する国際的ハッカー集団「アノニマス」が関与したとみられる攻 撃との関連は不明だが、5年後の五輪本番に向け、サイバー空間での防衛策も課題であることが改めて浮き彫りとなった。捜査関係者は「日本を狙う攻撃者に とって『東京五輪』は価値のある標的といえる」と警戒する。
◆ロンドンは2億回
東京五輪では国内外から1千万人近い観客が見込まれ、警備態勢の確立が急がれる。その中で、重武装テロリストによる襲撃やNBC(核、生物、化学)テロなどとともに、サイバーテロの危険が懸念される。
情報通信技術の活用は幅広く、交通をはじめ、電気、水道、ガスなど重要インフラを管理する基幹システムが攻撃されれば深刻な事態を招きかねない。組織委に よると、2012年のロンドン五輪では大会期間中、計2億回ものサイバー攻撃が確認されたといい、東京五輪ではこの何倍もの攻撃がある恐れがある。
警察関係者は「攻撃の手法は日進月歩。攻撃者が圧倒的に有利なのが現実だ」と話している。
◆大会準備に不満か
今回の組織委への攻撃はサイトに大量のデータを送り付けて負荷をかけ、サーバーをダウンさせる「DDoS攻撃」。アノニマスによるとみられる攻撃の多くもこのDDoS攻撃だが、関連性は不明だ。
英語で「匿名」を意味するアノニマスは、ネット上での言論の自由などを掲げて活動している国際的ハッカー集団とされる。実態は不明でネット上で緩やかなネットワークを世界中に広げているとの見方がある。
日本国内では9月、イルカや小型クジラの追い込み漁で知られる和歌山県太地町役場のHPが攻撃されたが、ネット上でアノニマスを名乗り、追い込み漁を批判して攻撃を呼びかける投稿が確認されている。
ITセキュリティー企業「ネットエージェント」の杉浦隆幸会長は「アノニマスは自由参加で政治的主張がない攻撃も多い。日本への攻撃も一貫性はなく意図は つかめない。オリンピック自体に反対しているわけではないが、(今回の攻撃は)準備の不手際に反感を持つメンバーによるものかもしれない」と分析する。
杉浦氏はDDoS攻撃では各個のアクセスは正当なため、「サーバー容量を大きくするなど受け手の対策が必要」と強調している。