サギ大群住宅街移住 騒音、悪臭、ふん害住民困惑 亘理

宮城県亘理町中心部の雑木林にサギの大群が住み着き、大きな鳴き声やふんが住民を悩ませている。営巣地だった沿岸部の雑木林が東日本大震災の津波で壊滅し、移住したとみられる。町や住民によると、その数は数百羽以上と推測されている。思わぬ震災の余波に音を上げる住民は「一日も早く林を伐採して」と町に抜本的な対策を求めている。
 町役場近くの住宅街、同町桜小路の数十メートル四方の雑木林。夕方になると、昼間は水田で餌をついばんでいたサギの群れがひっきりなしに帰ってくる。付近の住宅の屋根は、落としていったふんで真っ白。「ガー、ガー」と大きな鳴き声の合唱が明け方まで続く。
 林近くに住む男性(65)は「うるさくて寝られないし、ふんだけでなく卵や羽根も落としていく」とうんざりした表情。「以前はカラスがいた程度だったが、最近は日に日に増えている。1000羽はいるのでは」と話す。
 吉田地区で被災し、昨年6月に転居してきた女性(72)は「孫が『臭い、臭い』と困っていてかわいそう。ふんで汚れるので洗濯物もなかなか干せない」と避難先での災難に渋い顔だ。
 サギは夏になると、集団で営巣する「コロニー」を作る習性がある。町町民生活課によると、以前住み着いていた沿岸部の長瀞浜や阿武隈川下流の河川敷のやぶや雑木が津波で流失。その後、町中心部に集まるようになったという。
 一部住民が林で花火を打ち上げるなど駆除を試みたが、一過性の効果しかなかった。捕獲などの有害駆除は、チュウサギなど絶滅危惧種を誤って捕獲する恐れを考えると難しいという。住民からの相次ぐ苦情を受け、町は林の地権者4人ほどに伐採を依頼。町議会9月定例会には伐採費用の3分の1を補助する議案も提出する。
 地権者全員の同意はまだ得られていない。町民生活課の鈴木邦彦課長は「解決する唯一の手段は林の伐採しかない」と強調。町はサギが巣立つ秋以降に伐採に着手し、来夏の営巣を未然に食い止めたい考えだ。

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