霜害や高温に対応 市が補助事業 遊休農地など6ヘクタール活用
果樹生産が盛んな山形県上山市で、春の霜害や夏の高温障害に対応し、主力のサクランボやラ・フランスから他品目への転換を図る取り組みが始まる。国や県の補助事業を活用し、近年の気候変動に適合したブドウやモモを遊休農地などに植え、持続可能な高品質の果実生産を目指す。
(山形総局・奥島ひかる)
四方を山に囲まれた上山市は寒暖差が激しく、サクランボやラ・フランスなどは気候変動に伴う霜害を特に受けやすい。サクランボは夏の高温で収穫適期が短くなり、人手が足りずに規模縮小を迫られる農家も少なくない。
事業には生産者25人が参加。市内に点在する遊休地や既存の園地の計6・3ヘクタールに、霜害に比較的強いとされるブドウとモモの苗を植える。ブドウはシャインマスカットやワイン加工用として引き合いが強いカベルネ・ソーヴィニヨン、モモはサクランボと収穫期が重ならない川中島や陽夏妃といった品種を予定する。
市は、国・県の補助事業を利用し、園地の造成費や必要な資材、苗木の購入費などの一部を助成する。農地は2026年度の整備完了を目指す。3年間で約9000万円の事業費を見込む。
事業に参加し、モモの栽培に初挑戦する枝松祐悦さん(59)は23年、霜害でラ・フランスが全滅する被害を受けた。「霜対策を全ての園地で行うのは費用がかかる。長期的な視点で考え、品目を転換した方が経営も安定する」と語る。
市農林夢づくり課の担当者は「気候変動に対応した先行的な投資を行政も後押しし、上山の高品質な果樹栽培を守りたい」と話す。