サバ缶品薄、値上げや販売休止も 記録的不漁直撃、メーカー苦境

手頃な価格とヘルシーさが人気のサバ缶。昨季の記録的な不漁の影響で、缶詰メーカーが原料調達に苦戦している。全国大手の中には、値上げや一時販売休止の事態に追い込まれたメーカーも。関係者は缶詰に適したサバの水揚げが本格化する今秋までは品薄が続くと見通す。(生活文化部・小木曽崇)

「欲しいサイズの魚、これまでの2倍近くに」

 ニッスイ、マルハニチロ(東京)は3月から順次、値上げを実施した。キョクヨー(同)は5月から最大40%値上げし、2月から5月8日まで、ほとんどのサバ缶を一時休売している。広報担当者は「サバに限らず、商品が休売になることは、ここ十数年なかった」と話す。

 東北の缶詰メーカーも苦境に立つ。ミヤカン(宮城県気仙沼市)は主に八戸港(青森県八戸市)から銚子港(千葉県)までの太平洋沿岸で、11月から翌年1月にかけて水揚げされた脂の乗ったサバを使う。だが、いつもの300~600グラムのサバが大幅に不足していて、加工可能なサイズであれば300グラム未満でも活用し始めた。

 福島庸夫社長(56)は「欲しいサイズの魚の浜値が、これまでの2倍近くに上がった。小さな魚は手間の割に身の部分が少なく、工場の生産性が低下する」と苦労を明かす。サバ缶の出荷量を調整しつつ、水揚げが安定しているイワシ缶の販売を強化する方針だ。

 漁業情報サービスセンター(東京)によると、2022年のサバ類の全国主要港への累計水揚げ量は約23万トンで、21年の3分の2程度に落ち込んだ。

 東北の太平洋沿岸で漁期に海水温が上がり、サバが水深100メートル以上に潜ったため、巻き網船での水揚げが困難になった。センターの担当者は「海水温の上昇が解消して、水揚げが回復するかどうかは、現段階では不明」と説明する。

 卸会社も頭を抱える。仙都魚類(仙台市)の岩田晋也製品部長(52)は「サバはこれまで取れない時期があまりなかったので驚いている。各メーカーとも冬まで在庫調整しながら出荷していくだろう」と語り、サバ缶の品薄は夏、秋も続くと予測している。

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