サムスン、アップルに挑む

世界市場を席巻するIT機器の覇者・米アップルに、韓国サムスン電子が世界最大市場の米国で真っ向から勝負を挑んでいる。電子書籍などを楽しめる多機能情報端末「Galaxy Tab(ギャラクシータブ)」を主要通信会社4社から近く発売するほか、スマートフォン(高機能携帯電話)でも次世代高速データ通信規格「LTE」に対応した端末を他社に先駆けて投入する。いずれも独走するアップルの多機能情報端末「iPad(アイパッド)」やスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」の牙城を切り崩すことが狙いだ。
 「iPadに劣っている部分はひとつも見当たらない」
 サムスン社員は、米国市場に投入するギャラクシータブの優位性を強調する。米グーグルの基本ソフト「アンドロイド」を搭載し、200万冊以上の書籍に加え、47言語の新聞約1600紙を読める。コンテンツの充実ぶりは、iPadを上回る。
 米国市場で先行するiPadを追撃する戦略の要となるのが手厚い販売網だ。サムスンは9月中旬、ギャラクシータブをAT&Tなど主要4通信会社で販売すると発表。AT&Tが独占的に販売するiPadに対し、サムスンは“全方位外交”でアップルとの競争を優位に進める構えだ。
 また、スマートフォンでも対アップルの姿勢を強める。米通信会社メトロPCSが今月23日に米国初のLTEサービスを開始したが、対応端末はサムスンが供給した。米国のスマートフォン市場ではアップルのiPhoneが独走を続けてきたが、サムスンは今年6月に発売した「ギャラクシーS」がわずか1カ月半で100万台を突破するなど猛追しており、次世代規格のLTEではアップルの機先を制して対応端末を投入することで追撃を加速させる考えだ。
 1969年に創業したサムスンは、当初日本企業の技術や経営を学ぶことからスタートした。しかし、93年に李(イ)健(ゴン)煕(ヒ)会長(68)が「妻と子供以外はすべて変えろ」と抜本改革に着手し、2000年以降には海外進出も積極化。欧米だけでなく新興国でも急速にシェアを伸ばした。
 サムスンの2010年4~6月期の営業利益は5兆100億ウォン(約3700億円)で、日本の電機大手8社の合計を上回る。名実ともに日本メーカーを抜き去り、新たなターゲットとして世界市場でヒット商品を連発するアップルをとらえようとしている。
 米国と同じく両社の競争が激化しているのが中国市場だ。アップルは、今月に入ってiPadとiPhoneの最新版を立て続けに発売した。一方、サムスンも今月8日に人気スマートフォン「ギャラクシーS」を、チャイナテレコムなど中国の主要通信会社3社から一斉に発売し、フィンランドのノキアが席巻していた中国の携帯電話市場でシェア奪取を進めている。韓米の2大メーカーの争いは、米国と中国を主戦場にさらなる激化が必至だ。

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