サラリーマンが「お金持ち」になる5つの道

■「お金持ち」急増中、この波に乗れるか

今、日本に「お金持ち」が増えている。上図は、預貯金、株式、債券、投資信託、一時払い生命・年金保険などの純金融資産保有額(保有資産の合計額から負債を差し引いた値)をもとに、野村総合研究所(以下、NRI)が5つの階層に分類して保有世帯数を推計したものである。

純金融資産保有額が1億円以上5億円未満の「富裕層」、および同5億円以上の「超富裕層」を合わせると、2013年時点で100.7万世帯に。この結果を11年時点のデータと比較すると、「富裕層」は25.4%、「超富裕層」は8.0%、両者を合わせた世帯数は24.3%の増加となった。これは、NRIが同様の方法で推計した中で、00年以降のピークである07年の合計世帯数90.3万世帯を約10万世帯も上回る。

また、「富裕層」および「超富裕層」が保有する純金融資産総額は、それぞれ16.7%、65.9%増加し、合わせて28.2%の増加となっている。その総額241兆円は、ピークである07年の254兆円には届いていないが、09年、11年の推計結果を大きく上回った。この状況を、NRIの上席コンサルタント・宮本弘之氏は次のように分析する。

「『富裕層』の世帯数が大幅に増加したのは、11年時点では純金融資産が5000万円以上1億円未満であった『準富裕層』の多くが、この2年の間に資産を増やして『富裕層』になったためでしょう。『富裕層』および『超富裕層』の保有する純金融資産額の著しい増加は、保有する金融資産に占める株式や投信の比率が高いことが考えられます。そもそも『富裕層』および『超富裕層』には、上場企業等のオーナー経営者や、上場および非上場企業の株主が多く含まれるため、安倍政権下で行われたアベノミクスによる株価上昇がもたらした金融資産増加の影響が大きかったのでしょう」

とはいえ、「富裕層」および「超富裕層」の世帯数と資産規模は、経済環境や株価の影響を受けて大きく増減する。このままの調子で日本にどんどんお金持ちが増えていく……というわけではなさそうだ。

■お金持ちになるには5つの道がある

では、我々のような一般サラリーマンが経済的に豊かになるためには、どのような方法が現実的だろうか。ここからは、『ユダヤ人大富豪の教え』などの著書を持つお金の専門家・本田健氏にお話を聞いていこう。長年「お金持ち」の研究をしてきた本田氏は、「お金持ちになるためには大きく分けて5つの道がある」と語る。

「経済的豊かさを手に入れるためのルートは、今も昔も変わりません。

1つめは、親から財産や会社を受け継ぐこと。つまり、そもそも生まれた家がお金持ちだったというラッキーなケースです。

2つめは、夫や妻が亡くなって、遺産として財産や会社を受け継ぐこと。昔、高額納税者番付が出ていた頃は、創業者の妻や家族がランクインすることが多かったように思います。創業者の多くは仕事にエネルギーを吸い取られて早く死んでしまうため、結果的にはその妻や遺された家族がお金持ちになるのです。

3つめは、大企業の従業員として仕事で圧倒的なパフォーマンスを発揮すること。海外ほどではありませんが、日本でも名のある大企業に勤めれば年収3000万~5000万円程度は狙えるのではないでしょうか。最近では、年収が1億円を超える人も増えてきました。

4つめは、自分でビジネスを興すこと。場合によっては1人で『フリーランス』として活躍する人もいるでしょうし、数人~数十人の会社を徐々に育てていくことになるかもしれません。上場、非上場など事業規模や形態によって、成功までの道のりもゴールまでにかかる年数もさまざまですが、いずれにしても、自分自身の才覚を最大限活用してお金を稼いでいく方法です。

5つめは、投資をすることで財産を増やしていくこと。投資の対象を不動産にするのか株にするのか、FXにするのかは、気の長さや今現在の手持ちの資産の大きさによるでしょう。株やFXであれば比較的短期間に換金できるので、すぐに結果がほしい人に向いています。逆に、不動産で大きく儲けるためには数十年単位の長い時間が必要なので、この投資によってすぐに豊かな生活を享受したいと思っている人には不向きです。

例外的に、宝くじを当てる、親戚のおじさんが亡くなって遺産が転がり込む、などのケースもあるにはありますが、期待すべきではないでしょう」

この5つの条件の中で、1と2に当てはまる人は最初から「お金持ちになりたい」などとは思わないだろうから、本企画では除外する。すると、30代、40代のごく一般的な企業に勤めるサラリーマンが実践できるのは、4「ビジネスを興す」か、5「投資家として生きる」ということになる。すでに3「エリートビジネスマンとして大企業に勤めている」という状態であれば、エリートとして順当に出世を狙うか、エリートという立場を捨ててビジネスをはじめるか、エリートでありながら副業的に投資を行うかの三択になるだろう。

■お金持ちが教える「お金のIQ」とは

本田氏によれば、お金持ちは富を生み出すための知恵「お金のIQ」が高い。また、子どもにその知恵をきちんと受け継がせるため、親がお金持ちだと子どももお金持ちになれる可能性が高いという。いずれの道をたどるにしても、親から「お金のIQ」について教えられていない我々は、まず次の4つの原則を学ぶ必要がある。順に紹介していこう。

1:たくさん稼ぐ

当たり前のことではあるが、お金持ちになるためには、稼がなければ話がはじまらない。こう聞くと、ほとんどの人が手っ取り早くお金が儲かりそうなことを仕事にしようとする。しかし、そのような仕事は競争相手も多く、簡単にはうまくいかない。また、「流行りもの」と同じように、短期間で稼げる仕事はダメになるのも早い。ここが重要なのだが、お金持ちになるためには、「長期間にわたって」成功し続ける必要がある。結局は、できるだけ多くの人に喜ばれるサービスや商品を長く提供し、着実に支持を得ることが「お金持ち」への近道なのだ。

2:「生き金」を使う

せっかく稼いだお金をうまく使うことができるかどうかも、富を生み出すための鍵となる。「生き金」という言葉があるが、うまくお金を使えば、一度は自分のところから出ていったとしても、後々仲間を連れて戻ってきてくれるのだ。そのため、何が「生き金」になるのか、「死に金」になるのかをよく見極めることが重要だ。「自分とまわりの人が幸せになること」にお金を使うのが「生き金」である。無自覚にお金を使うのではなく、「これは本当に生き金だろうか?」と自問する習慣をつけよう。

3:お金を守る

富を形成していくためには、たくさん稼ぐと同時に手元にお金を残しておく必要がある。堅実な方法でお金を稼いで、うまく使うことができたとしても、守りが甘いと手元に残ったお金はあっという間になくなってしまうため、注意が必要だ。「お金を守る」とは、端的にいえば、自分と他人との境界線をはっきりさせるということだ。といっても、「他人に施しを与えるな」「ケチになれ」という意味ではない。そのお金によって誰かを助け、幸せにすることができるのであれば、どんどん使えばいい。ただし、お金をあげたり、保証人になったりすることが、必ずしも他人を幸せにするケースばかりではないということは、肝に銘じておく必要があるだろう。

4:投資で増やす

投資に成功すると、お金自身も働いて新たなお金を稼ぐようになるため、富は加速度的に増えていく。ただし、投資で成功するためには、経済の流れだけでなくさまざまな勉強をする必要がある。また、「攻め」の姿勢でビジネスでは成功してきた人が、投資でも成功するとは限らない。その強気の姿勢があだとなって、せっかく築いてきた富を大きく減らしてしまうこともある。ビジネスか、投資か、どちらを主軸にするのかは、自分の適性を見て決める必要があるだろう。さらに、投資対象や投資のスタイルも、自分に合ったものを探し当てるまでには時間がかかる。あまり準備もせずに、甘い誘いに乗ってリスクの高い投資をするのはご法度だ。

この4つの原則は、お金との付き合い方の基本とも呼べることなので、プレジデント読者諸氏も「頭ではわかっている」状態ではないだろうか。それなのに原則にのっとった行動ができないのは、まだ「お金のIQ」が低いからだともいえる。「現実を見たくない」などと言ってお金から逃げず、真剣に向き合うこと。これが、IQを高めるための唯一の方法となる。

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