サントリー天然水がジョージア抜く、28年ぶり飲料水トップ交代の理由

水がコーヒーを抜き、ついに首位に――。

 国内清涼飲料水市場のブランドにおける首位争いで、逆転劇が起こった。コカ・コーラのコーヒーブランド「ジョージア」が1990年から28年間トップに君臨していたのだが、2018年の年間販売数量でサントリー食品インターナショナルの「サントリー天然水」ブランドが抜いたのだ。

 サントリー天然水は、16年、17年にはすでに年間販売数量で1億ケースを超えていた。そして、18年には前年比109%で過去最高の1億1,730万ケースを達成した。一方のジョージアの年間販売数量は1億940万ケース(飲料総研調べ)。その結果、およそ800万の差で28年ぶりの首位転落を許したことになる。水のブランドが国内一位になったのはこれが初めてのことだ。

 安全に飲める水道水が普及している日本だけに、かつては、金を出して水を購入することに抵抗がある消費者もいた。しかし、それははるか昔の話で、今やミネラルウォーターの市場は伸び続けている。1990年に1.6リットルだった日本の一人当たりのミネラルウォーターの年間消費量は、17年には28.4リットルへと激増(日本ミネラルウォーター協会調べ)。市場規模も10年度には2100億円程度だったが、16年度には3000億円に近づいている(矢野経済研究所調べ)。

 背景には健康意識の高まりがある。実際、水を飲むことが「健康によい」と答えた人は15年には78.8%だったが、18年には85.8%に増えている(サントリー調べ)。また、自然災害が多発していることで、水を常備する動きが進み、「水を買う」という行動へのハードルを下げているのだ。

 そんな状況の中、サントリー天然水が水源にこだわり、冷たくて清らかである「清冽(せいれつ)なおいしさ」を打ち出したことで、消費者に受けた。

 さらに、大きいのはサントリー天然水の商品ラインナップが豊富になったこと。近年では、炭酸水やヨーグルトやフルーツの味をつけたタイプなども人気で、「ヨーグリーナ&南アルプスの天然水」や透明なのに紅茶の味がする「プレミアムモーニングティー」シリーズ、強い炭酸を含む「サントリー 南アルプススパークリング」シリーズなどを立て続けに、商品化しているのだ。

 一方、コーヒー市場に目を向けると、ここでもコカ・コーラのジョージアを、サントリーの「ボス」ブランドが猛追している。特に、サントリーが17年に他社に先駆けて売り出したペットボトルタイプの「クラフトボス」は大ヒットとなった。クラフトボスは18年も好調を持続し2700万ケースを販売。その結果、ボスブランド全体では18年の販売数量が1億ケースを超えた。18年のブランド別シェアでは、天然水、ジョージアに次いで、ボスは3位につけている。

 ちなみに、コンビニのレジカウンターで発売されるカップ入りのコンビニコーヒーも拡大を続けている。コーヒーのライバルは飲料メーカーだけではないのだ。

 つまり、ジョージアの属するコーヒー市場はプレーヤーが入り乱れた厳しい戦いが続いているのだが、そんな中、水に首位を取られたというわけだ。

 もともと、サントリーとコカ・コーラの両社は単一のブランドだけではなく、すべてのブランドを合わせた会社全体の販売数量としても首位を争っている。飲料総研のデータによれば、17年のシェアはコカ・コーラの26.7%に対し、サントリーは21.5%。12年と比較してシェアは3ポイントほど縮まり、その差は1億ケースほどに迫っていた。

 今回、ジョージアのブランドとしては首位を奪われたコカ・コーラだが、18年は、全体の販売数量としては首位を保った。サントリーの全ブランドの年間販売数量は4億2610万ケースだが、コカ・コーラは5億150万ケースと、差は縮まったとはいえ7500万ほど上回っている(飲料総研調べ)。また、同じく市場が拡大している緑茶飲料の市場では、17年の2位はサントリーだったのだが、18年の2位はコカ・コーラが獲得している(首位はいずれの年も伊藤園)。

 サントリーが全ブランド合計での首位を取る日は来るのか。それとも、コカ・コーラが首位を守るのだろうか。水、コーヒー、緑茶という日本人が毎日接する飲み物での両社の戦いからは目が離せない。

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