福島県いわき市の小名浜港を拠点とする大型のサンマ漁船5隻が、魚を船上で箱詰めして冷凍する「船凍化」に取り組む。記録的な不漁に加え、漁場の遠方化、燃料代の高騰という三重苦に見舞われる中、サンマの鮮度を保ちながら、地元への水揚げ量の確保を狙う。
水揚げ量確保
福島県漁連によると、昨年の5隻のサンマの総水揚げ量は1705トン。三陸・常磐沖に漁場が形成されず、主に北海道沖での漁だったことに燃油高が追い打ちをかけ、小名浜港への水揚げは過去最低となる17トンにとどまった。
サンマの来遊量は今季も低水準が予測され、燃料高騰も収まる気配がない。ロシアのウクライナ侵攻に伴う日ロ関係の悪化で、ロシア海域での操業は不安要素も残る。漁場から遠い小名浜港への水揚げ確保が厳しい状況が続く。
冷凍サンマは生サンマと比べて低価格で取引されるが、小名浜港に水揚げされるのは主に加工用。鮮度を保った船凍品でも一定の需要が見込める。水揚げ量を確保し、地域の流通・加工体制を維持する狙いもある。
1隻当たり5トン
8月中旬に小名浜港を出航したサンマ漁船には、加工業者が利用しやすいように船凍品専用の箱が積み込まれた。今季は需要把握に向けた試行と位置付け、既存の冷凍設備などを使い、1隻当たり5トンの船凍品を生産する計画だ。
船凍品はかつて、サンマが豊漁だった時代に各船の判断で生産していたが、漁獲量が少なくなった近年は作られていなかった。県漁連は今季の水揚げ目標を船凍品25トンを含めて280トン以上に設定した。
県漁連の担当者は「まずは小名浜への水揚げ量を増やしたい。今の状況が続き、需要が見込めるようであれば、船凍品の比率を上げることも検討したい」と話した。