サンリオ、「2分4000円」のライブ配信に賭ける訳 オンラインごしの触れ合いに申し込みが殺到

東京・多摩市でテーマパーク「サンリオピューロランド」を運営するサンリオ傘下のサンリオエンターテイメント。同社も新型コロナウイルスによって多大な被害を受けた。 新型コロナウイルス特集など、最新情報をモバイルで詳しくはこちら PR Microsoft ニュース

 ピューロランドは2月22日から7月12日までの約5カ月間、同施設の営業自粛を余儀なくされた。その結果、親会社であるサンリオの2020年4~6月期のテーマパーク事業の売上高は、前年比90.8%減のわずか2億1800万円にとどまった。

オンラインでキャラクターと交流

 「4月時点では、年内の(営業再開は)無理かもという覚悟を持たないといけなかった」

 こう話すのは、ピューロランド館長も務めるサンリオエンターテイメントの小巻亜矢社長だ。新型コロナの収束が見えない中、テーマパークの施設維持など固定費だけが消えていくという厳しい状況が続いていた。

 そんな中、6月から同社が乗り出したのはオンラインでキャラクターと触れ合うことのできるライブ配信「オンライングリーティング」。グリーティングとは、サンリオの人気キャラクターであるハローキティやマイメロディなどと1対1で写真撮影をしたり、触れ合ったりするものだ。

 同社では以前もこうしたライブ配信を検討したことがあったが、「来場者が減少する懸念もあり、できていなかった。しかし、新型コロナの感染拡大でやらないと生き残っていけないだろうと思った」(小巻社長)という。

 ピューロランドでは以前から有料グリーティングをテーマパーク内で実施しており、1分間で2000円という価格だった。オンライングリーティングではそうした値段を加味し、2分間で4000円に設定。ファンでなければ、かなりの高額だと感じる価格帯だ。

 しかし、この2分間4000円のライブ配信に申込者が殺到。抽選倍率7倍の人気ぶりとなった。小巻社長は「長くお客さんとキャラクターの触れ合いがなかったので渇望感があったのではないか。やってみてわかったが、オンライン上では自分一人とキャラクターのプライベート空間ができあがる。そのため、(顧客の)没入感がすごかった」と分析する。

人目を気にせずキャラクターと触れ合い

 通常のグリーティングでは、多くの人が並んでいる前でキャラクターと触れ合うことになり、周囲を気にする人もいた。しかし、オンラインであれば、人の目を気にせずにキャラクターと触れ合える。さらに、オンラインではキャラクターで埋め尽くされた部屋を見せることで、ファンのキャラクターへの愛情を今まで以上に示すことができる。

 同社は今後もライブ配信を継続し、2020年10月からはハロウィーンをテーマにしたオンライングリーティングを実施予定だ。

 ただ、同社の経営状況はこうしたライブ配信だけでは好転しないほど厳しい。新型コロナが一向に収束する気配を見せず、ピューロランドへの来園者を見込むことは難しいためだ。

 サンリオのテーマパーク事業(大分県のハーモニーランドを含む)はデータの残る2002年3月期以降、赤字続きだった。

 ところが、小巻社長がサンリオピューロランド館長に就任した2016年以降、そうした状況が一変する。若手俳優とサンリオキャラクターが共演する「2.5次元ミュージカル」などが評判を呼び、以前までは70万人台だった来場者数は100万人を突破した。

 さらに、優先入場やパレードの場所確保ができる「ピューロパス」を導入することで2017年3月期には年間パスポート売り上げが前期比20.8%増加。そうした結果、2018年3月期からテーマパーク事業は黒字に転換。徐々に経営環境も好転し、債務超過解消の道筋も見え始めた矢先に襲ったのが新型コロナだった。

 2020年3月期のサンリオエンターテイメント社の純利益は5800万円の赤字に転落。同社は依然として16億円の債務超過に陥ったままだ。

来場しなくても楽しめる施設に

 債務超過などを解消していくためには、今までにない手段で売り上げを上げていく必要性がある。同社では「新しい生活様式に即したコンテンツを提供し、運営形態も工夫を重ねてコロナ禍前の営業状態を取り戻していく」ことに加え、「デジタル企画、オリジナル商品の通販を実施し、パーク外収益をあげていく」(同社広報)ことで債務超過の解消を目指していく。

 小巻社長は「今まではピューロランドに来ていただくことが最優先だったが、今はそうではない。いつでも、どこでも、来なくても楽しめるピューロランドに、ユビキタスにならなければいけない」と語る。

 エンターテインメント業界は今まで、実際に来場して楽しんでもらうことを優先してきた。コロナ後の新しいビジネスのあり方が模索されている。オンライングリーティングは1つの挑戦であり、ピューロランドの取り組みはその試金石だとも言えそうだ。

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