今は「コンビニ評論家」などと名乗って仕事をしていますが、地方都市・浜松市出身の僕のファーストコンビニは、今から35年ぐらい前のサークルKでした。
近所の酒屋や食料品店がオシャレになり、24時間営業して便利だなぁと。そのころは、ビートたけしさんが全盛で深夜のオールナイトニッポンなど、「深夜=若者」、よって「コンビニ=若者(特に男)」の店でした。
今やコンビニは「シニアのお店」と言われていることは当時、誰も考えられなかったし、隔世の感があります。
高校生の僕がサークルKで買っていたのは、おにぎりなどの中食ではなく、中京スポーツ(東京スポーツ)や週刊プロレス。当時、熱狂していたアントニオ猪木やUWFなどの情報収集の場だった。その当時の僕のGoogle 検索は、サークルKだった気がする。
そんなサークルKも、2018年11月29日AM10時、ファミリーマートとのブランド統合完了に伴い、尾西開明店(愛知県一宮市)が営業を終了、セレモニーが行われた。そして、11月30日をもって、”まるK”の愛称でお客さまから愛されたチェーンが1号店オープンから38年目にして日本から姿を消すこととなった。
サークルKといえば、東海地方を中心に当時、人気絶頂だった荻野目洋子のテレビCMを覚えている40代以上の人も多いが、昨年、再びブレイクした『ダンシングヒーロー』のようにはいかなかった。
サークルKがオープンした1980年代は小売業の雄はGMS(総合スーパー)でダイエーが君臨し、名古屋を中心とする東海地方はユニーが圧倒的で、ユニー株式会社内のサークルK事業部として、島田店(名古屋市天白区)を1号店として開店した。
当時、アメリカの西海岸では本家のサークルKが展開されており、発祥がガソリンスタンドということもあり、日本でもガソリンスタンド併設店を基本に展開し、この“ナウい店舗”が日本にも増えていくんだろうと思ったりもしていた。
強く印象に残っている“チビ太のおでん” サークルKの商品といえば、赤塚不二夫の『おそ松くん』のキャラクターである”チビ太のおでん”がテレビCMのテーマソングとともに強く印象に残っている。
こんにゃく・がんもどき・鳴門巻きが串刺しになったワンハンドで食べられるおでんは、
「スマホ時代の片手で食べる」今の時代に合っているのかもしれない。
コンビニの焼き鳥を大手チェーンとして根付かせたのもサークルKで、ワンハンドファストフーズとしてファミリーマートとの経営統合後も一時展開を中止していたが、お客や報道に後押しされて復活し、発売から半年で1億本を売る人気商品となっている。
男性をコアターゲットにしたボリュームのある弁当やメガスイーツなども専売特許だった。
尾西開明店の日置店長は、「サークルK時代は、ボリュームのり弁とお茶のセットなどが人気だったが、時代とともにその特徴もなくなった。ボリュームシリーズは男性を意識した部分もあるが、名古屋のカサ増しを好む食文化とも合致していた」と話す。
サークルKが店舗数で圧倒していた当時は大手チェーンの中では成人誌の品揃えが圧倒的だったのも特徴の1つで、成人誌を発行する出版社もサークルKを意識して本作りをしていたと話す業界関係者もいたくらいだ。
サークルKと言えば、地域に影響力のあるエリアフランチャイズの展開もいち早く行ったことが有名だ。1986年3月には株式会社亀屋みなみチェーン(本社・青森県青森市)とエリアフランチャイズ契約を締結し、青森県のドミナント化を推進、本社のある中部エリアから遠く離れた青森でも人気を博した。
同年、金沢市にも北陸地方1号店である泉ヶ丘店(現存せず)を開店し、石川県や富山県など北陸地方でも一定の存在感を示すことに。
僕がローソンのバイヤー時代の2003年、マンダムの新商品プレゼンを受けた後に、サークルKとサンクスと一緒になると聞いて衝撃を受けてから15年。
2011年には、サンクス店舗を運営するサンクスアンドアソシエイツ富山からローソン富山への事業譲渡が決定し、翌年にはコピー複合機の入れ替え作業で頻繁に富山を仕事で訪れていた。
2015年にはファミリーマートとサークルKサンクスとの経営統合が発表され、ローソンが業界2位の座から落ちることを聞いたときは、僕は既にローソンから離れており、いかんともしがたいことではあるものの、衝撃を覚えたことを思い出す。
「5万店飽和説」の先にある日本のコンビニ コンビニ業態全体を見渡すと、2018年9月時点で日本の総店舗数は5万8435店舗となり、増店数は今年に入ってから64店舗と飽和感があり、大手3社のシェアは約89%と、寡占化も進んでいる。
コンビニの店舗が大手3社の色に塗り替えられることで、買物の多様性が失われつつあるのが、今の日本だ。
業界的な見方をすると、ファミリーマートはam/pmとサンクス、サークルKの統合により、自社競合店舗も増えているわけだが、ファミリーマートは集客力を鑑み、店舗オペレーションに負荷が掛からずに立地に合った客層の取り込みが可能なコインランドリーやフィットネス併設店舗などを出店。これらが損益分岐点を超え、来季はコインランドリーで8店 、フィットネスで5店の出店を足掛かりに展開を強化していく戦略だ。
このように、セブン-イレブンやローソンが年間1000店舗の出店を続ける中、ファミリーマートは数にこだわらない収益を見込める店舗を出していく戦略にシフトしているわけで、ドラックストアとの併設やドン・キホーテとのコラボなど地域のニーズに合わせて多様化した店舗を増えていくものと思われる
今後の日本のコンビニだが、ファミリーマートに限らず、チェーンの個性を出すために、エリア特性に合わせた店仕入れでの特徴ある商品を取り扱う動きも積極化しそうだ。
サークルKとサンクスのファミリーマートブランドへの転換から2年3カ月、am/pmからファミリーマートへの転換(720店舗が転換された)の5倍のスピードで、5003店舗の看板を変えたわけだが、未来につながらない店舗、1300店舗は閉鎖されている。
11月30日の閉店でサークルKが最後になってしまうわけだが、サンクスは既に全店舗がファミリーマートになり、営業を終了している。ブランド転換をした店舗では、1日当たりの売上高が平均で110%、客数が112%と伸長しているなど、好調に推移。転換後1年後も売上高が102%と好調を維持しているというが、それ以降が本当の勝負のときといえるだろう。
ファミリーマートの澤田社長によると、「転換期には400人のスタッフとSVが転換業務に取られたが、お客さまをきっちり迎えるべくトレーニングや教育などの人材育成の部門に人事異動し、愚直な施策でセブン-イレブンの背中を追い掛けていく」と、飽和するコンビニ業界で戦っていくとのこと。
とはいえ、お客の立場としては、”まるK”と呼んで愛されてきたサークルKがなくなるのはすごく寂しいことだなぁ~。
マーケティングアナリスト 渡辺 広明