新型コロナウイルスの感染拡大防止を理由に、全国各地のサーフィンスポットで自粛を求める動きが広がっている。東北では、福島県いわき市が海岸の使用自粛をサーファーらに呼び掛け、宮城県が海浜公園の駐車場を閉鎖するなどして協力を求めているが、愛好者からは賛否の声も上がる。
いわき市は、政府が緊急事態宣言の対象地域を全都道府県に拡大した翌日の17日、宣言期間の5月6日まで同市平豊間にある豊間海岸の使用自粛を求める文書を、付近の駐車場内に張り出した。
要請を受け、「福島サーフィン連盟」(室原真二代表)は県内全域でのサーフィン自粛を申し合わせた。宣言以前から、会員制交流サイト(SNS)でサーフィン目的の県境越えや、波情報の投稿を控えるよう独自に呼び掛けていた。広報担当の尾形明彦さん(47)は「苦渋の決断だったが、組織として期間中の自粛を決めた」と話す。
理解を示すサーファーがいる一方で、疑問の声も出ている。運動不足の解消や健康維持の観点から、人と人との接触が少ない屋外スポーツは許容してほしいという意見も少なくない。
仙台市宮城野区の仙台港にある全国的なサーフスポットの向洋海浜公園は、県が24日から駐車場を閉鎖した。40年近く通う市内在住の会社員男性(58)は、「波待ちの間は常に人との間隔を空け、移動はほぼ全員が車。海に入る前後の立ち話を控えれば感染防止は可能だ」と話す。
世界的なサーフィンの名所、米ハワイ州は現在都市封鎖(ロックダウン)を実施し、日本より厳格な外出禁止令を敷くが、健康維持目的のサーフィンは認められている。現地のラジオアナウンサーは「感染防止のルールを守れば問題ないと多くの人が考えている」と言う。
いわき市観光事業課は「近隣に高齢者が多く、サーファーのみならず週末には県内外の人でにぎわうため、不安の声が上がった」と海岸の使用自粛を要請した経緯を説明する。
仙台港を管理する宮城県は「日本サーフィン連盟が自粛を呼び掛けていることもあり、駐車場の閉鎖を決めた。人が集まることを防ぐためで、サーフィン自体の自粛を求めるものではない」との考えを示す。