若者だけでなく、シニアの間で“おしゃれ”が広がっている。「ガモコレ」と呼ばれるシニアのためのファッションショーが開かれるなど、年齢問わず全世代でファッションを楽しんでいるのだ。
そもそもおしゃれなシニアが増えているのは、なぜか。背景には、彼女たちが生きてきた時代が関係しているとifs未来研究所所長でファッション文化に詳しい川島蓉子さんは話す。
「団塊世代は、60年代のミニスカート、70年代のヒッピー、ジーンズルックといったように、若いころから流行のファッションを経験してきました。そういった世代がシニアになってきたため、今、『おしゃれなシニア』がマーケットとしてできつつあるのです」
主婦の友社は、銀座や表参道を歩く60歳以上の女性のファッションスナップを集めた写真集『OVER60 Street Snap』を昨年9月に発売。初版は6千部だったが、異例の人気で現在8刷、5万5千部と部数を伸ばした。
「編集部に『こんな本が欲しかった』と感謝のお電話をくださる方もいらっしゃいます」(編集者の依田邦代さん)
三越伊勢丹は昨年4月から、60代前後のアクティブシニアの女性をターゲットにしたプライベートブランド「メゾン ド ウーマン」を立ち上げた。旅行に 持っていきやすいようシワになりにくい素材を使ったワンピースや、おなか回りにギャザーを入れて膨らみを目立たせない効果をつけたトップスなどの商品を展 開している。
「既存のシニア服売り場では満足されなかった方が足を運んでくださり、新規の顧客が増えています」(三越日本橋本店セールスマネージャー・小田島巧さん)
ただ、まだまだ市場には「おばあちゃん」ぽくなってしまう洋服も多い。そんななか、自分の体形や好みにぴったりの洋服を手作りしている人もいる。 神奈川 県に住む斎藤みつ子さん(67)、菊地和代さん(67)はそのタイプだ。洋裁学校に通っていた経験のある斎藤さんは、子育てが落ち着いた40代後半から、 洋服を手作り。コート、セーター以外はほぼお手製だという。
「手作りするときは、バスト回りをフィットさせすっきり見せ、ウエスト回りはゆったりさせてカバーするといった、自分の体形を美しくみせられるラインになるよう作ります。ぴったりのものができるとうれしいですよ」(斎藤さん)
菊地さんも斎藤さんに学び、夏物のワンピースなどを手作りしている。
「お互い、若作りしすぎていないか、暗すぎないかなどチェックし合って、年齢に合うファッションを楽しんでいます」(菊地さん)
おしゃれなのは、女性だけではない。都内在住の大石三雄さん(83)は、ファッションを「生活の一部」として楽しんでいる。わざと穴を開けたダメージジー ンズにスニーカーを合わせカジュアルなスタイルをしたり、カーディガンを肩からかけたり、柄の入ったTシャツの上にシャツを羽織ったりと、おしゃれにぬか りがない。
「いくつになっても格好よくいたい。年齢にこだわらず、着たいものを着ています。太ると洋服が似合わなくなるので、毎日筋トレをして体形を保っています」
大石さんいわく、「ジーンズに革靴はおじさんぽくなるのでスニーカーやブーツを合わせる。シャツはボタンを全部閉じるのでなく、ボタンを開けて羽織るように着るとおしゃれに見える」とのこと。