シャオミが社員122人に「3億円」特別ボーナス、ファーウェイ失速で絶好調

中国のIT企業は、桁外れのボーナスを奮発することがある。最近は、ファーウェイ(華為技術)の失速で漁夫の利を得ているスマホメーカーのシャオミ(小米集団)が、1人当たり3億円を超える特別ボーナスを支給し話題になっている。

●月に2回、特別ボーナス大盤振る舞い

 シャオミは7月6日、精鋭技術者、「新10年創業計画」の第一陣メンバー、管理職など、計122人に1億1965万株の株式を付与する「株式報酬」を発表した。付与総額は31.34億香港ドル(約443億円)相当で、1人あたりだと2570万香港ドル(約3億6000万円)になる。

 「新10年創業計画」は同社が創業10年を迎えた2020年8月に発表したプロジェクトで、シャオミの価値観やミッション、ビジョンを共有し、優れた成果を出した100人を選抜し、創業者のような気持ちと条件で新事業を開拓してもらう内容だ。

 同日、雷軍CEOはSNSのウェイボ(微博)で、「1人だと速く走れる。大勢だと遠くまで走れる。シャオミは各層の優秀な人材に成長の手段と手厚い報酬を提供する。人材こそがシャオミの今後10年の基盤だ」と投稿した。

 実はこの4日前の2日にも、シャオミは社員3904人に合計7023万株を付与すると発表していた。対象者は若手エンジニア、新卒社員、社内アワードで賞を獲得したエンジニアなどで、当日の株価を元に計算すると、1人あたりの付与額は664万円に相当する。

 さらにこのうち「青年エンジニアインセンティブプロジェクト」に選ばれた700人に絞ると、1人当たりの額は848万円に上昇する。

 雷CEOによると、同プロジェクト入りした最年少メンバーは24歳とのことだった。

●キングソフトにも恩恵波及

 シャオミがボーナスを連発するのは、納得の背景がある。21年1-3月期の売上高は前年同期比55%増収の768億8000万元(約1兆3000億円)、純利益は同2.64倍の61億元(約1000億円)で、どちらも市場予想を大きく上回った。

 絶好調の最大の要因は、米政府の規制でスマホの部品調達を封じられたファーウェイの失速だ。同社は世界のスマホシェアで19年まで2位を守っていたが20年は3位に後退。21年は7位まで落ちるといわれている。一方シャオミは20年後半に3位に浮上し、その座をキープしている。

 また、同社は今年2月にEV製造への参入を発表し、雷氏は「今後10年の経営者人生を賭けたプロジェクト」と決意を示した。自動車は人材の争奪戦が激しく、7月初旬にはトヨタ自動車の元チーフエンジニアが広州汽車集団の幹部に転身した。

破格のボーナスは、より大きな勝負に向け、優秀な人材に向けたアピールもあるだろう。

 ただ、雷氏は今月5日、シャオミだけでなく、同社創業前までトップを務めていた、互換オフィスソフト「WPS Office​」で知られるキングソフト​(金山軟件)社員へのボーナスも発表しており、気前の良さが改めて認識されている。

 キングソフトや雷氏によると、約8000人いる全社員がそれぞれ600株ずつを付与されるという。発表日終値ベースで見ると、1人が受け取る株式は371万円の価値がある。

 キングソフトは特別ボーナスの目的を「グループへの貢献に対する感謝と、今後も当社にとどまり成長に寄与してくれることへの期待」と説明している。

 雷氏自身はウェイボで、「21年はキングソフト董事長(会長)になって10年目の節目。10年の売上高が10億元(約170億円)だったのが、20年に120億元(約2000億円)に成長した。社員の努力によるものだ」と投稿した。

 雷氏は1992年にキングソフトに6人目の社員として新卒入社。20代でトップに昇りつめ、IPOを見届けた07年にCEOを辞職した。その後10年にシャオミを創業したが、20年まで会長、名誉会長を務め影響力を持ち続けた。

●ボーナスは人材獲得競争の裏返し?

 中国のメガIT企業が何かの節目に特別ボーナスを支給するのは、珍しいことではない。

 コロナ禍に見舞われた20年は、景気のいい話はあまり聞かなかったが、19年11月、トランプ政権から規制を受けたファーウェイが、規制によって従来の部品やサービスが使えなくなり、代替品の開発に奔走した部署の約2万人を対象に、総額20億元(約340億円)の「奮闘特別ボーナス」を支給した。単純計算すると1人当たりの取り分は10万元(約170万円)に上る。

 また同年12月には、中国IT大手テンセント(騰訊)が、クラウド事業売り上げ100億元(約1700億円)達成のご祝儀として、同部門の全社員にiPhone 11 Proをプレゼントした。対象社員は約3000人とされ、1台10万円で計算すると約3億円が投じられたことになる。

 日本では考えられない大盤振る舞いだが、その裏にあるのはIT企業の人材獲得競争の激しさだ。また、メガIT企業は軒並み“ブラック企業”といわれ、企業はアメとムチを使い分け、社員を選別し、管理している。

 ファーウェイの社員は、「給料や福利厚生はとてもいいが、成果が目標に届かないと解雇もあり得る。社内競争も非常に激しく、プレッシャーにさらされる日々だ」と漏らした。

(浦上早苗)

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