【山本智之】スギの木にスプレーすると、花粉をつくる「雄花」だけを狙い撃ちして枯らし、翌年の花粉発生を抑える――。そんな新技術を、森林総合研究所(茨城県つくば市)が開発した。安全性や生態系への影響を確認する大規模試験が、今秋にも始まる。
【写真】通常のスギの雄花。アレルギーの原因となる花粉を飛散させる=森林総合研究所提供
国民病ともいわれるスギ花粉症。その発生源対策としては、無花粉スギの植樹なども進められているが、成長には長い年月がかかる。今回の技術は、今あるスギの花粉発生を抑えることができるという即効性が特徴だ。
スプレーの主成分はカビの胞子。きっかけは2004年、福島県内のスギ林で、通常は褐色のはずの雄花が、黒く変色しているのが見つかったことだった。森林総研の窪野高徳科長(樹病学)らが詳しく調べ、「シドウイア・ジャポニカ」というカビの一種が、スギの雄花を枯らしたためと分かった。