「多くのマスメディアが正面から取り上げてこなかった」「メディアはその影響力を行使することにより、人権侵害を即時にやめさせるべきであったし、できたはずであった」 国民栄誉賞作曲家の次男がジャニー喜多川氏からの性被害を告白 「8歳の時に自宅部屋で…」 メディアに対する苦言はなぜ、盛り込まれたのか。ジャニーズ事務所の故ジャニー喜多川前社長による性加害問題を巡り、事務所が設置した「外部専門家による再発防止特別チーム」が8月29日に公表した調査報告書のことだ。 報告書は前社長の性加害の事実を認める一方、「マスメディアの沈黙」と題した項目でメディアの報道姿勢についても踏み込んだ。要約すると、多くのメディアが事務所に対して忖度や過度な配慮をみせ、性加害問題を真正面から取り上げず、結果として「性加害も継続されることになり、さらに多くの被害者を出すことになったと考えられる」と指摘しているのだが、不祥事などを調べる第三者委員会が当事者ではないメディアの責任に触れるのは異例だろう。 報告書を公表した際の会見場に微妙な空気が流れたのも無理はない。 ■検察官の定年延長問題でもメディアは尻込み 司法記者の間でささやかれていたのは、特別チームの座長を務めた林真琴前検事総長(66)の思いがあったのではないか、との指摘だ。 「林さんは早くから検事総長に就く人物と目され、法務省刑事局長から事務次官になるはずだったが、当時の安倍官邸がこの人事をはねつけ、菅官房長官と近しかった法務省官房長の黒川さんを次官にした。そして、名古屋高検検事長に就いた林さんがいよいよ検事総長に、という時に出てきたのが突然の検察官の定年延長という話。政権の守護神と言われた黒川さんを何が何でも検事総長にしたいという安倍官邸の意向だったわけですが、ここまで恣意的だと法治国家でも何でもない。しかし、当時のメディアは皆、官邸ににらまれるのが怖くて真正面から批判しなかった。結局、黒川さんは記者とのマージャン賭博が報じられ、定年延長の改正法案も流れたわけですが、林さんはこの時のメディアのふがいなさ、強いものに弱腰の報道姿勢に呆れたのではないか」(週刊誌記者) 報告書があえて「マスメディアの沈黙」と題したのも、報道機関に対して「沈黙していいのか」「傍観者でいいのか」という叱咤激励する意味が込められていたのかもしれない。