ジャニーズ性加害問題、スポーツ紙&ワイドショーが「沈黙」破る 扱いには大きな差、「メディアの責任」踏み込んだ番組も

ジャニーズ事務所創業者として知られるジャニー喜多川氏=2019年に87歳で死去=による性加害問題について、事務所は23年5月14日夜、藤島ジュリー景子社長による謝罪動画と書面を公式サイトに公開した。

   これまで性加害問題について黙殺状態だった民放のワイドショーやスポーツ紙も、事務所の発表を相次いで報じた。ただ、これまで大半のメディアが報じてこなかった点に言及した番組もあれば、論評抜きで伝える番組もあり、番組や媒体による温度差も浮き彫りになった。

スポーツ紙は3紙が性加害問題を1面で報じた

スポーツ紙は3紙が性加害問題を1面で報じた

石原良純氏「事実認定ができないっていうのは、まあそういうことなんでしょうけども…」

   動画では「世の中を大きくお騒がせしていること」について謝罪し、「被害を訴えられている方々」「関係者の方々、ファンの皆様に大きな失望とご不安を与えてしまったこと」に対しても謝罪。一方、書面では「当然のことながら問題がなかったとは一切思っておりません」とする一方で、

「当事者であるジャニー喜多川に確認できない中で、私どもの方から個別の告発内容について『事実』と認める、認めないと一言で言い切ることは容易ではなく、さらには憶測による誹謗中傷等の二次被害についても慎重に配慮しなければならない」

として事実認定は避けた。さらに

「知らなかったでは決してすまされない話だと思っておりますが、知りませんでした」

とも主張した。

   この発表は、5月15日朝のワイドショーも相次いで報じた。「モーニングショー」(テレビ朝日)では、「おうちに入れてほしいネコちゃん」、JR香椎線のガラス破損事故に続く3番手として報じた。8分20秒ほどかけて事実関係を伝え、石原良純氏と玉川徹氏がコメントした。

   石原氏は、

「当事者であるジャニー氏が亡くなっているから事実認定ができないっていうのは、まあそういうことなんでしょうけども…」

と断った上で、一連の問題や、これまで知られてこなかったジャニーズ事務所のガバナンスが明るみに出たことに着目。問われるのは「先のこと」だとした。

「時代がどんどん変わっていってるなと…。こういうことが取り上げられて、メディアに取り上げられて。やっぱりびっくりしてたじゃないですか、新聞に…。僕はジャニー喜多川さんってどんな人だかみんな知らないって結構業界で有名で…顔が分からない。今の社長、ジュリーさんにしたって僕ら分からない人が多かったと思うんですけど、それだけ、なんか時代が変わっていくんだなって感じで見てますけどね。まあ、これは先のことなんでしょうね。これからどうなってくかってことが大事なんじゃないですか」

事務所に「自ら検証」求める玉川氏、メディアのあり方に言及する武田アナ

   玉川氏は、ジャニーズ事務所の対応を評価したうえで、事案の検証が必要だとした。

「藤島社長がこういうふうにしてコメントして、謝罪をしたということが大きなことだと思うんです、僕は。とても大きなことだと思うし、大きなステップを踏み出したんだなと思います。やっぱり今後なんですよね。今回コメントされたことをきっちり進めていけるかどうかということと、自ら検証して進めていけるか。その際に、やっぱり被害を訴えられている方を第一に考えて進めていけるかということがポイントだし、ジャニーズの未来を、そこが決めるんだろうと思います」

   対照的にメディアのあり方に言及したのが「DayDay.」(日本テレビ)。ニュースの項目としては1番手で9分10秒ほどかけて伝え、司会の武田真一アナが

「私も報道の現場に長くいましたけれども、この間、こうした事といいますのは芸能界の中での出来事で、ニュースとして伝えるべきことなのかどうかということを突き詰めて議論したり考えたりしてきませんでした」

と発言。藤島氏が書面で「自らも積極的に知ろうとしたり、追求しなかったことについて責任があると考えております」と言及したことに触れながら

「同じ責任を、伝える側としても感じています」

と述べた。

   コメンテーターの大門小百合氏は、一連の問題について報じたBBCの記者が日本外国特派員協会でリモート会見した際、日本の「沈黙の壁」に言及したことを紹介。その上で

「日本のメディアがこのことをどうとらえてきたかというのも、ひとつ問題だったのかなと思っていて、芸能界の話だったりゴシップみたいな形でとらえてはいなかったのだろうか、真摯(しんし)に取材の対象として見ていなかったのではないかということもあり、自分も含めて反省している」

と述べた。

   「めざまし8」(フジテレビ)は、番組終盤の9時15分から5分40秒かけて報じ、コメンテーターが発言する場面はなかった。

   在京キー局の持ち株会社は6月に株主総会を控えており、さらにステークホルダーへの説明責任が求められる局面だ。

スポーツ紙は朝刊6紙中3紙が1面で報じる
   スポーツ紙もいっせいにウェブサイトや紙面で発表を報じた。5月15日は休刊日で、朝刊として発行されているスポーツ紙はコンビニや駅売店向けの「1部売り」のみを発行した。在京6紙のうちスポーツニッポン、東京中日スポーツ、サンケイスポーツの3紙が1面で発表を報じ、社会面や芸能面に関連記事を載せて詳報した。
   デイリースポーツと日刊スポーツの1面はプロ野球のDeNA-阪神戦。藤島氏の発表は、それぞれ芸能面と文化社会面で扱った。スポーツ報知の1面は巨人の中川皓太投手が支配下登録選手に復帰する話題で、藤島氏の発表は芸能面の見開きで展開した。
   6紙のうち4紙が解説記事を掲載、それぞれ
「公の場で説明尽くせば伝わる誠意も…」(スポーツニッポン)
「改革へ本気度試される」(東京中日スポーツ)
「自浄を誓った決意が実行されることを望む」(サンケイスポーツ)
「ネット中心に収拾つかないほどに」(スポーツ報知)
といった見出しを掲げたが、メディアのあり方に関する言及はなかった。
   この日のスポーツ紙は、ジャニーズ事務所の不祥事とタレントの活躍が紙面に同居する珍しい状態。サンケイスポーツの解説記事では
「14日に発表したのは、事務所外に直接及ぶ影響をなくすためだ。この日は所属アイドルが他事務所のタレントと共演する取材現場がなく、Aぇ!groupの単独ライブのみ」
と言及している。
   夕刊として発行されている東京スポーツは、最終面で発表を報道。
「国際社会対策で浮上 事務所改名案も」
「世界を納得させられたのか 海外&キャスター戦略に影響必至」
の見出しで、さらに対応が必要になるとの見通しを報じている。
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