トマトジュース業界トップのカゴメが、東北で加工用トマトの契約栽培面積を広げている。宮城では前年比約3倍に拡大し、東日本大震災の被災地の畑との契約も多い。同社は「復興につながる取り組みとして、今後も契約面積を増やしたい」と意気込む。
トマトジュースには濃縮還元とストレートの2種類があり、カゴメは国産トマトを搾ったストレートの製造販売に力を入れる。2012年のブーム以来、市場規模は200億円を超える。
同社のジュース工場は栃木県那須塩原市にあり、北関東を中心に栽培されたトマトを使ってきた。国内産の需要が増えるにつれて産地拡大が必要となり、12年に宮城の農家との契約を開始。13年に2.13ヘクタールだった栽培面積はことし、6.47ヘクタールまで広がった。東北では青森、岩手、福島各県の農家とも契約を結ぶ。
宮城県東松島市の農業法人「アグリードなるせ」はことしカゴメと契約し、試験栽培を始めた。津波で所有者が離農した約30アールの畑に5月中旬、苗を植え付けた。現在約25センチまで育ち、8月下旬に約15トンの収穫を目指す。
アグリードなるせの安部俊郎社長は「被災者に働く場を提供する取り組みにしたい」と可能性を見いだす。
同法人は被災農家7人をパートで雇うが、仕事量の季節変動が大きいのが悩みだった。トマトの植え付けや収穫時期は他の作業と重ならず、安部社長は「繁忙期の間を埋めることができるかもしれない」と期待する。試験栽培が成功すれば、来年以降面積を増やす考えだ。
カゴメはフィールドマンと呼ばれる専門家を支社に置き、10日に1度畑を訪問するなどアフターケアに力を入れる。同社は「市況に左右されず安定収入が得られるのは農家のメリットになるはず。東北での契約を進めていきたい」と話した。