ジョブズ氏の死をきっかけに密かに広がる「サムスン不買」の輪

IT業界のカリスマ、スティーブ・ジョブズの死去が全世界に衝撃を与える中、その前日に発表されたばかりのiPhone4Sは予約が殺到。未発売のジョブズの伝記も、予約段階で米Amazon第1位となっている。さらに、ジョブズが愛用していた黒いタートルネックまで売り切れ続出となるなど、ジョブズ氏にまつわる商品を対象に、”追悼買い”ともいえる現象が起きている。
 その一方で、アップルと特許侵害に関する訴訟合戦を繰り広げて来たサムスン電子の製品には、不買運動の輪が広がりつつある。
 熱狂的なMacユーザーが集まる米サイトの掲示板には、ジョブズの死後、「サムスンとの訴訟問題がなければ、アップルからもっと素晴らしい製品が世に出ていたかもしれない」というサムスンバッシングや、「ジョブズを弔うため、サムソン製品を廃絶しよう」という呼び掛けが書き込まれている。
 また近年、反韓ムードが高まっている中国ではさらに辛らつだ。中国版Twitter「微博」には、
「サムスンのアップル製品の剽窃は、病に伏せるジョブズを苦しめた。人が弱ったところに攻撃を仕掛けるとは、韓国人のやりそうなこと」
「ジョブズ氏に哀悼の意を表し、今から家にあるサムスン電子製品を残らずたたき潰す!」
 といったつぶやきが寄せられている。
 当のサムスン電子は、10月11日に予定されていた、最新版のアンドロイド「アイスクリーム・サンドイッチ」を搭載した新型スマートフォン「Nexus Prime」の発売を延期した。また同社は、ジョブズの葬儀中はアップルに対する訴訟活動を停止するとも発表した。ともに、「ジョブズ氏に敬意を表するため」としているが、密かに広がる不買運動が過熱化することを警戒した措置だったのかもしれない。
 死してなお宿敵を牽制するジョブズの存在感は、やはりカリスマといったところだ。
(文=高田信人)

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