ステーキ店がパスタ業界に殴り込み!怒りの低価格&大盛り

ステーキチェーン「けん」の運営会社が大盛り、低価格を看板にしたパスタ店の展開に乗り出した。2年で50店を目指す事業のトップに起用されたのは、社内で「パスタ屋をやりたい」と訴えていた25歳の男性社員。大学卒業から3年しかたっていない存在を新ビジネス挑戦へ動かした背景には、学生時代から感じ続けたある“怒り”があった。
 エムグラントフードサービス(東京)が新たに展開するのは、パスタ店「キッチンつばさ」。1日、千葉県松戸市に1号店をオープン。同社では2年で50店、初年度の年商11億円を目標に掲げている。
 居抜き物件を使って初期投資を抑え、販売価格を下げる同社得意の手法を用いる。最安値のペペロンチーノは単品399円、食べ放題のサラダバー付きでも714円という低価格を実現。パスタの量も通常サイズで300グラムと、一般的な1皿の1・5倍にした。
 責任者となったパスタ事業部部長の竹山翼さん(25)が語る。
 「とにかくパスタが好きで、イタリア料理店で2皿頼むこともざら。自分がたくさん食べたいからこそ、皆さんにもおなかいっぱい食べてほしい」
 学生時代、都内のイタリア料理店でアルバイトし、パスタの調理にあたった。自宅でも材料をそろえて練習するうち、大きな疑問を感じた。
 「材料費は1皿200円ぐらいなのに、店では1000円以上で出されている。700円や600円でも利益は出せるはず。これではお客さんがかわいそう」
 しかも、大盛りを注文すればどの店でも100~150円増しは当たり前。「原価が安いのにどれだけ搾取するつもりだ」と憤り続けた。
 大学卒業後の2009年、エムグラントに入社。ステーキ「けん」の運営に携わるなか、「大盛りで安いパスタ屋をやりたい」と訴えた姿が井戸実社長(34)の目にとまり、新事業の責任者を任されることに。屋号には自分の名前が採用された。
 同社はステーキ、とんかつなど肉に関するビジネスが主流だった。さらなる成長を狙う同社にとって、新業態は「経営リスクの分散」(広報担当)を考慮した重要な一角。経験より熱意と若さを重視した抜擢人事だ。
 竹山さんは学生時代、イタリア料理店の前に都内の焼き肉店でも働いていた。それが外食産業との出合いという。
 「面接した店長に『採用。明日から来て』と言われなければ、多分、飲食店で働いていなかった。あの偶然で今があると思うと不思議なものです」
 飛躍に向けたチャンスのきっかけは、どこに転がっているか分からない。

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