スバル・レガシィ  高額でも売れる意外な理由

障害物をみつけると自動的に車を停止させる富士重工業の運転支援システム「アイサイト」は、技術的な内容以上に、多数の消費者に商品を体験させる「アトラクション」としての機能が業界に注目されている。
新車ディーラーのセールスが自社の車を語るとき、決まって言うのが「とにかく一度乗ってもらえればこの車の良さが分かってもらえるのに…」というセリフだ。
アトラクション効果で消費者引きつける
2010年5月に導入された第2世代のアイサイトは、自動停止のアトラクション効果で数多くの消費者をスバル・レガシィに乗せることに成功した。それによってレガシィは発売2年目を迎えた高額商品にも関わらず、国内で前年並みの販売台数をキープしている。
アイサイトはバックミラーの左右に取りつけたステレオカメラや、統合制御されたアクセル、ブレーキなどで構成するシステム。前車との距離を保って加減速を自動で行うクルーズコントロールや、ペダル踏み間違いによる暴走防止などの機能を持つが、一番のアピールポイントは石田ゆり子らが登場したCMでおなじみの自動停止=プリクラッシュセーフティーだ。
レクサス車などで数十万円のオプションだったのを一気に10万円まで引き下げた割安感もあり、搭載車レガシィでの選択率は6~7割に上る。
手ごわい国内の消費者に買ってもらう近道として、自動車メーカーとディーラーは試乗に力を入れている。グッズの用意から、数日間の無償貸与まで、その努力は涙ぐましい。
乗った人は「本当に止まるんだ!」と驚く
アイサイトは体験のユニークさで、消費者が進んで車に乗りたがる状況をつくった。ディーラーの店頭やショッピングモールでの出張展示会で、体験者を積み上げている。ディーラーは「乗った人は『本当に止まるんだ!』と驚く。アイサイトのおかげでスバル車に乗ってくれる人が増えた」と喜ぶ。
誰にも分かりやすい乗車体験としては、ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)の「静けさ」が挙げられる。トヨタディーラーは、プリウス大ヒットの要因のひとつに、「普通の車とはちがう、モーター走行時のおもしろさ」を挙げる。
もともと「走りの良さ」が売りで、環境技術の投入に遅れをとったスバルにとって、HVを始めとする「エコ」が席巻する市場環境は快適とはいいがたい。「安全」の重要性に目を向けさせた意味でアイサイトの効果は大きい。

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