ジャニーズ事務所の創業者、故・ジャニー喜多川氏(享年87)の性加害問題を巡り、藤島ジュリー景子社長(56)が公表した動画や文書について、スポンサー企業からも疑問の声が上がっていることが、「週刊文春」の取材でわかった。複数のスポンサー企業が「週刊文春」の取材に対し、説明や対応が不十分だとする見解を示した。
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ジュリー氏は5月14日、ジャニー氏の性加害問題を巡り、自身の謝罪動画と一問一答形式の文書を公開。文書では「当事者であるジャニー喜多川に確認できない」として事実認定を避け、一方で「週刊文春」が性加害問題を報じた1999年当時、すでに取締役だったにもかかわらず、「知らなかったでは決してすまされない話だと思っておりますが、知りませんでした」などと釈明した。
ジャニーズのスポンサー企業に緊急アンケート
「週刊文春」は今回、ジャニーズタレントがCM等に出演しているスポンサー企業116社(公的機関なども含む)をリストアップ。緊急アンケートを実施した。尋ねたのは、以下の3項目だ。
(1)ジュリー社長の動画と文書は、十分な説明責任を果たしていると思うか
(2)事務所が性加害問題について、第三者委員会を設置しないことへの評価
(3)ジャニーズタレントをCMなどに起用することで、性加害を容認する企業イメージを国内外でもたれかねないことに対する見解
期限までに回答があったのは、96社。一方、回答が無かったのは、20社だった。例えば、嵐・松本潤を風邪薬「ルルアタック」のCMに起用する第一三共ヘルスケアは「担当者が全員不在」とし、回答が無かった。同じく嵐・櫻井翔をがん保険のCMに起用するアフラック生命保険も広報担当者から折り返しが無く、回答が無かった。元V6の岡田准一をCMに起用するセントラル警備保障も「担当者に伝えておきます」としたものの、回答が無かった。
「企業として社会的責任を」「決して看過できない問題」
他方、個別の質問への回答は避けたものの、(1)~(3)の質問にまとめて厳しい見解を示した企業も少なくなかった。
例えば、ジャニーズWESTの重岡大毅を家庭用会員制生ビールサービス「キリンホームタップ」のCMに起用するキリンホールディングス。以下のように回答した。
「当社としては、引き続きジャニーズ事務所様の対応を注視してまいります。コンプライアンス上重要な問題であると判断した場合は、当社のコンプライアンスポリシーに則り、企業として社会的責任を果たしてまいります」
「ジュリー氏のお気に入り」(ジャニーズ関係者)と言われるなにわ男子。彼らを通信教育「進研ゼミ」のCMに起用するベネッセホールディングスは、以下のように回答した。
「当社として、いかなる性暴力や性的加害も断じて許されるものでは無く、決して看過できない問題であると厳粛に受け止めております。先般のジャニーズ事務所の正式公表を機に、被害を受けた可能性のある方々への今後の誠意ある対応を期待して、引き続き慎重に事態の進展を見守っております。その上で、所属タレントの皆様の活躍を、安心して応援できる状況が一日も早く整う事を願っております」
さらに、ジャニーズアイランド社長で元V6の井ノ原快彦ら20th Centuryのメンバーを男性用化粧品「ニベア」に起用する花王も、次のように回答している。
「弊社が起用しているタレントの所属事務所において、ご指摘の報道がなされていることは承知しております。性加害の問題は、花王人権方針と花王ウェイの基本的な考え方に反するものと考えています。ジャニーズ事務所が発表されたコンプライアンス改善が重要と考え、今後の対応を注視してまいります」
「現在のジャニーズ事務所の対応は、社会的に見て不足」
他方、TOKIOをCMに起用するハウスクリーニング企業のユアマイスターは、(1)の質問に対し、以下のようにより厳しい見解を示した。
「現在のジャニーズ事務所の対応は、社会的に見て不足していると考えます。事実関係の究明、被害者の方を守る、所属タレントの方を守る、この3点について、引き続き真摯に対応していただき、社会へ報告していただくことを期待します」
同社は(2)の質問(事務所が性加害問題について、第三者委員会を設置しないことへの評価)に対しても、以下のように回答した。
「被害者の方々へのケアを最優先に配慮していただきつつ、第三者委員会を設置することがより早期の事実関係究明につながるのではないかと考えます。被害者の方々と所属タレントの方々を守る具体的な対策を実施していただけることを期待します」
なにわ男子の藤原丈一郎を「日本生命セ・パ交流戦」のアンバサダーに起用する日本生命も、(2)の質問に対して、以下のように回答している。
「当社としては、一部報道にあるような性加害に関する問題について、到底許される行為ではないと強く感じています。そして何よりも、被害者の方々に寄り添った調査・対応が優先されるべきと考えます」
「タレントには罪が無い」「あくまでも故ジャニー喜多川氏(事務所)の問題」
(3)の質問(ジャニーズタレントをCMなどに起用することで、性加害を容認する企業イメージを国内外でもたれかねないことに対する見解)については、企業によって対応が分かれた。
SixTONESの松村北斗をノンアルコールビール「オールフリー」のCMに起用するサントリーホールディングスは、「タレントには罪が無い」との立場だ。
「当社は『サントリーグループ人権方針』を掲げ、人権尊重の姿勢を打ち出しており、今後ともジャニーズ事務所の対応を注視していきたいと考えている。一方、タレント自身に責任はないと考えており、今後もブランドイメージに最も適したタレントを起用していく」
元SMAPの木村拓哉を栄養ドリンク「リポビタンD」のCMに起用する大正製薬も、(1)~(3)の質問にまとめて次のように回答した。
「動画につきましては、当時の状況を踏まえご説明されたことは理解できました。当社はいかなるハラスメントも許容するつもりはありませんが、あくまでも故ジャニー喜多川氏(事務所)の問題であり、原則的にタレント本人に問題があった訳ではないと考えています。
今後の調査対応については注視していきますが、ジャニーズ事務所が合理的に出来る調査をされた結論(結果)であれば尊重します」
タレント起用による企業イメージについて苦渋を滲ませる回答
一方、TOKIOを起用する前出のユアマイスターは(3)の質問に対し、苦渋を滲ませる回答を寄せた。
「当社は、いかなる性加害も許容しません。本事案につきまして、事実であれば大変遺憾です。弊社は、契約させていただいているタレントの方に大変感謝しておりますし、引き続き応援させていただきたいという想いがあります。他方、契約を継続することが、性加害を許容しジャニーズ事務所の現対応で満足し十分であると容認することと同義であるとする指摘があることも認識しております。性加害を決して許容せず、且つ被害者の方々が守られ、所属タレントの方も引き続きエンタテインメントを通じて活躍していただける解決の実現に向け、引き続き当社としての対応を検討してまいります」
一方、グローバルに事業を展開する企業はどうか。欧米では著名人や企業幹部らの性加害問題に日本以上に厳しい視線が注がれてきた。米国に本社を置く世界最大級の消費財メーカーP&G(プロクター・アンド・ギャンブル)の日本法人で、Sexy Zoneの菊池風磨を洗剤「ボールド」のCMに起用するP&Gジャパンは、以下のように回答した。
「P&Gは高い倫理基準のもと世界各地で事業を行っており、当社のビジネスパートナーにおいても、同様の基準での運営を求めており、ジャニーズ事務所にも同じく伝えています」
ジュリー氏はジャニー氏の性加害問題を「知らなかった」としたうえで、第三者委員会の設置も見送った。これに対し、多くのスポンサー企業から厳しい声が上がる中、ジュリー氏が今後、どのような対応を取るのか、注目される。
5月24日(水)12時配信の「週刊文春 電子版」および5月25日(木)発売の「週刊文春」では、元人気グループメンバーによる実名顔出しの性被害告白や、3人が脱退したKing & Princeの近況、1999年当時の担当記者・中村竜太郎氏のインタビューなど、ジャニー氏の性加害に関する7頁にわたる特集を掲載。また、「週刊文春 電子版」では、無回答も含めたスポンサー企業など全116社、広告代理店3社の計119社の回答を掲載している。
ジャニーズ・デビュー組から初の性被害告白 元「忍者」志賀泰伸氏(54)が「30回から40回くらいは性的虐待があった」 へ続く
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2023年6月1日号)