総務省が発表した平成30年の『情報通信白書』によれば、個人のスマートフォン保有率は過去最高となる84%を記録。ただこれは前年の83.6%とほぼ変わらず、横ばいの状態が続いているともいえる。また、移動体通信・IT分野専門の調査会社MCAが今年2月に発表した「キャリアショップ」に関する調査によれば、大手キャリア系列のショップ数は8341店舗。2018年5月に実施した前回調査と比較し、9か月間で168店舗減少している。
大手通信キャリアで携帯ショップの統括をするA氏は、スマホがかつてのように売れなくなっていると話す。
通信キャリアの名前を冠した携帯ショップのほとんどは、代理店が展開するフランチャイズ。端末の販売や新規回線の獲得、機種変更などで生じる「販売インセンティブ」や、回線の契約が継続される限り支払われる「継続インセンティブ」がショップの売上となる。
「売上は、端末が1台売れれば数千円、新規回線契約では1万円といった具合です。契約時に提案される留守電機能や保険、動画サービスなどの各種オプションの加入でも数百円ほどの金額が入ります。
また、『継続インセンティブ』として通信料の数パーセントが店の成績となり、顧客がインターネット契約をすればさらに数パーセント上乗せされます。その他にも、『100台売ったら100万円』などの『目標達成インセンティブ』がショップに入るという仕組みも。お店はそれらの組み合わせでランク付けされるので、売上を作ることに必死になります」(A氏、以下「」内同)
機種変更サイクルが2年から4年に
しかし、A氏のショップでも売上は伸び悩んでいるという。
「スマートフォンの普及率も、これ以上劇的に伸びることはないでしょう。端末の進化もあり、かつて2年ほどだった機種変更などの買い換えサイクルも4年ぐらいになっている印象です。格安スマホと呼ばれるMVNO事業社の影響も大きい。携帯キャリア各社も傘下にMVNOブランドを取り扱っていますが、料金が安いため、携帯ショップに入る『継続インセンティブ』も少なくなり、あまり商売になりません」
さらに、ショップ売上に大きな影響を与えたのが、総務省が「実質0円」や本体価格を上回るキャッシュバックを規制したことだという。新規契約の時に還元できるキャッシュバックの金額が減ったことにより、他の通信会社に移るキャリア変更も減少。A氏の体感によれば、この10年で約3分の1になったという。
キャリアとは関係のないクレームも
「ショッピングモール内にあるような、月の売上が1000万円超のモンスター店ならまだしも、ほとんどの店舗は月の売上が300万~400万円ほど。利益率も数パーセントと低いので、テナント賃料や人件費などを払うと、月に30万円ぐらいしか残らない。辞めたがっている代理店も多く、特に、小さい割に賃料の高い、地方都市の駅前店舗は閉店が相次いでいます」
さらにAさんは、“お金にならない”仕事も多く、スタッフが疲弊している現状を明かす。
「クレジットカード、電気、インターネット回線や、各種オプション品やアクセサリーや保護シートなど、本来の商品ではないものを提案しないといけない。また、『LINEが使えない』『高校生の息子が勝手に契約した。どう責任とってくれるんだ』などといったキャリアとは関係のないクレームもかなり寄せられ、消耗するスタッフも少なくありません」
携帯ショップのビジネスモデルも岐路に立たされているようだ。