スマホで広がる信用情報登録10代のブラックリストも増加

 高まるスマートフォン人気が、思わぬ若年層の“ブラックリスト”化を招いている。
 ブラックリストとは、ローンの借り入れや分割払いの契約などで返済不能に陥った要注意人物について、貸し手の間で共有する情報のことだ。携帯電話の分割払いの信用情報を提供するシー・アイ・シー(CIC)によれば、3ヵ月以上滞納し、ブラックリスト入りした人は、2010年6月の21万人から、昨年末の145万人へ跳ね上がった。
 背景にあるのは、携帯電話事業者が販売店へ支払う販売奨励金の廃止だ。かつて「0円ケータイ」など激安端末を可能にした奨励金だが、廃止により、端末価格が高騰し、若者の携帯電話購入を難しくすることが懸念されていた。これを避けるため、携帯電話事業者が編み出した苦肉の策が、端末代の分割払い契約である。2年間の継続利用などを条件に、月々の利用料を割引することで、端末代を実質的に安く抑える手法だ。
 この販売手法は現在、半ば常識となった。分割払いを利用すると、CICに支払い状況などの信用情報が登録されるが、延滞件数を含めたその登録総数は、11年12月までの1年半で825万件から、4342万件となり、毎月200万件近く増え続けている。
 携帯電話の国内累積契約数は昨年、日本の総人口とほぼ同じ1億2000万台超に達しており、実に3台に1台が分割払いを利用し、支払い情報がCICに集められている計算だ。「スマートフォンをはじめとする高額端末の登場が、分割払い契約を浸透させている」とCIC幹部は言う。
 問題は、自動車など他の分割払い契約と異なり、携帯電話は、10代、20代の若年層が分割払いを利用していることだ。
 携帯電話以外では、若年層のCICの信用情報への登録は1割程度にすぎないが、携帯電話では3割近くにも上る。
 「携帯電話端末の分割払いは、他の商品と違い、利用料が端末代と相殺されるほど割り引かれるため、分割払い契約を結んでいるという意識が希薄。安易に滞納するケースも少なくない」と業界関係者は指摘する。未成年の場合、親が実際の支払者となっていることも多く、「親が滞納し、子どもが知らぬ間にブラックリスト入りするケースもある」(同じ関係者)。
 かつては数十万円、百万円単位の高額商品に限られていた分割払いだが、滞納のしっぺ返しは、数万円の携帯電話でも“等価”だ。
 分割払い契約で滞納し、ブラックリスト入りすれば、その情報は将来、クレジットカードを作ったり、ローンを組む際に照会される。十分な自覚のないままブラックリスト入りした若者が、分割払いやローンの借り入れなどができなくなるという事態が続出しそうだ。
 (「週刊ダイヤモンド」編集部 宮原啓彰)

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