スマホで農水産物を直接売買 東北発アプリ「ポケマル」に農家や漁師続々

 生産者と消費者が農水産物をスマートフォンで直接売買する東北発のアプリ「ポケットマルシェ(ポケマル)」が人気を集めている。昨年9月のサービス開始以来、食文化の新たなニーズを掘り起こし、参加する農家や漁師は全国に急拡大する。大手ベンチャー企業や投資ファンドは将来性を見込み、熱い視線を送る。
10月下旬、大船渡市三陸町綾里の小石浜漁港。午前4時半、水揚げしたばかりの「恋し浜ホタテ」の箱詰めが始まった。
ポケマルの売りは、スマホを通じた生産者と消費者の直接交流だ。綾里漁協小石浜養殖組合ホタテ部長の佐々木淳さん(46)は、普段から注文を受けるとスマホでホタテ6個入りの箱を撮影、写真を添付して客に発送完了の通知を送る。
佐々木さんは「全国の消費者がアプリで初めて『恋し浜』を知り、注文してくれるようになった。宣伝効果は大きい」と話す。
ポケマルのサービスは図の通り。出品から入金管理までスマホで完結する。生産者はスマホで商品を撮影してアプリに出品。注文が入ると自動的に提携する運送会社から配送伝票が届き、商品を発送する。
消費者は、アプリ上にある生産者のコミュニティーに参加して感想を伝えたり、料理した写真を投稿したりできる。
アプリを運営するのはポケットマルシェ(花巻市)。食べ物付き月刊誌「東北食べる通信」を発行するNPO法人東北開墾(同)が母体のベンチャー企業で、売買代金を決済し、15%分の手数料を得る。
アプリを利用する生産者は北海道から沖縄まで全国に広がり、当初の100人から350人に急増した。
9月にはフリーマーケットアプリ運営「メルカリ」(東京)、ミドリムシを使うバイオベンチャー「ユーグレナ」(同)、マレーシア政府系投資機関と連携した投資ファンドの3者から出資を受け、約2億円を調達。将来は共同事業の展開も視野に入れる。
メルカリの原田和英コーポレート戦略マネジャー(37)は「個人間売買の楽しさを広めるメルカリとビジョンが共通する。食の市場は大きい上、生産と消費の双方にかつてない価値を提供している」と期待する。
ポケマルの本間勇輝取締役(38)は「魚を直接漁師から買う体験は初めてのはず。生産者と消費者が個人で交流する食文化を広め、食を担う誇りを生産現場に取り戻したい」と語る。

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