スマホゲーム、総崩れ? 各社の“冴えない決算”

売上高900万円に対し、営業赤字が8億600万円――これは、ドワンゴのゲーム事業(2018年4~12月期)の業績だ。ドワンゴの親会社、カドカワが2月13日に発表した決算説明資料によれば、ドワンゴが昨年11月から提供している位置情報ゲーム「テクテクテクテク」の不振が響いたという。当初は19年3月期通期で売上高50億円、営業利益25億円を見込んでいたが、「課金要素が少なく当初予算に対して大きなマイナスになった」(同社)としている。

 テクテクテクテクは、プレイヤーが現実世界を歩くと、位置情報を基にマップが塗りつぶされていくスマホゲームだ。AR(拡張現実)技術を活用し、巨大化した小林幸子さん、ゴジラ、エヴァンゲリオンの使徒などが出現する、というインパクトも話題を呼んだ。ドワンゴは、リリース直後から積極的にプロモーションを展開し、ユーザー数の拡大に努めてきたが、うまく収益化に結び付かず減益要因に。開発費用を一括償却した。

 ドワンゴは、同ゲームの不振に加え、主な収益源である動画サービス「niconico」の有料会員の減少もあり、減損損失37億円を計上。これを受け、カドカワは19年3月期通期(18年4月~19年3月)の連結業績予想を下方修正し、最終損益は43億円(前回予想の54億円の黒字)と赤字に転落した。

●スマホゲーム各社でも“冴えない”決算

 テクテクテクテクの不振は、スマホゲーム事業を立ち上げることの難しさを物語っているようにも思えるが、1月末~2月にかけては、スマホゲームのヒット作を生み出してきた各社でも“冴えない”決算発表が相次いだ。

 サイバーエージェントは19年度(18年10月~19年9月)の営業利益見通しを、300億円から200億円に下方修正。昨年9月、スマホゲーム「ドラガリアロスト」をリリースし、出だしは好調だったものの、売上が想定より伸びなかった。藤田晋社長は自身のブログで「過去にも同様のパターンでゲームが伸び、全体が潤っていたことから、特定のゲームタイトルに依存し過ぎてしまっていた」と述べている。コスト削減によって立て直しを図る。

 「白猫プロジェクト」などを展開しているコロプラの18年10~12月期連結決算は、3億7600万円の最終赤字(前年同期は13億5200万円の黒字)に転落。決算説明資料には「『バクレツモンスター』(バクモン)をはじめとする新作は厳しい状況です」という一文があった。昨年リリースしたバクモンがふるわず、既存タイトルの減収幅を埋めるまで至らなかった。創立10周年を記念したイベントの費用もかさんだ上、新規タイトルの開発が増え、外注費が増加したことが影響した。

同じくディー・エヌ・エー(DeNA)も18年10~12月期は営業損失が21億円と赤字に転落。一要因として、ゲーム事業の減収を挙げている。守安功社長は「特定のタイトルが要因ではなく、主力タイトルの維持が全般に難しかった」と説明。19年1月の動向は「悪くない」とし、事業が急変したとは捉えていないという。19年3月期通期(18年4月~19年3月)の連結業績予想は据え置き、売上高は1258億円(前年比9.7%減)、純利益は105億円(同54.3%減)を見込む。

 「アナザーエデン」などの海外展開が好調だとしているグリーは、18年10~12月期の売上高は177億円(前年同期比17.3%減)、営業利益が10億円(同13.7%減)と減収減益。第3四半期は「海外展開の貢献と新規タイトルに対する開発投資の本格化を見込む」と予想している。

●看板タイトルへの依存から脱却なるか

 一方「パズル&ドラゴンズ」(パズドラ)を開発・運営しているガンホー・オンライン・エンターテイメントの18年10~12月期は、売上高が303億円(前年同期比59.2%増)、営業利益が93億円(同85.0%増)と急回復。昨年10月末から実施したイベント「パズドラ大感謝祭」で“休眠ユーザー”を掘り起こすなどし、アクティブユーザーの活性化を図ったことが功を奏したという。ただ、18年12月期通期(18年1~12月)の連結業績は、売上高が921億円(前年比0.2%減)、営業利益が266億円(同22.4%減)、純利益が165億円(同25.9%減)。「売上高の減少トレンドが止まり、前年比横ばい」としているが、続く“パズドラ級”のヒットは見えていない。

 「モンスターストライク」(モンスト)が屋台骨のミクシィは、18年10~12月期の売上高が349億円(前年同期比17.2%減)、営業利益が61億円(同43.6%減)と減収減益。モンストへの依存から脱却するため、ネットベンチャーのXTech(クロステック、東京都中央区)を戦略パートナーに迎え、最大300億円をM&Aに振り分けると発表した。エンタメ・メディア領域で、スタートアップ、上場企業を問わず、事業創出につながる買収を進める考えだ。

 新規タイトルを開発、あるいは新事業を立ち上げ、看板タイトルへの依存体質を脱却できるかどうか――。不振が続く中、各社が“次の一手”を模索している。

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