マホを使う時間が急に長くなっていることが、NTTドコモの研究機関、モバイル社会研究所(東京都千代田区)が2024年8月15日に発表した調査「ここ1、2年でのスマホ利用時間の変化:『長くなった』25%、『短くなった』5%」で明らかになった。 (図表)ここ1、2年のスマホ利用時間の変化:年代別 わずか1、2年のうちにスマホ利用時間が長くなったと感じている人が4人に1人もいるという。 そんなに急に長くなって大丈夫なのか。スマホ以外にもっと時間を有効活用したほうがいいのではないか。調査した専門家に聞いた。 ■スマホ利用、なぜか20代~30代で短くなる人が1割 モバイル社会研究所の調査(2024年2月)は、全国の15~79歳の男女5719人が対象だ。 まず、ここ1、2年でのスマホ利用時間の変化について聞くと、「長くなった」と答えた人が25%、「短くなった」と答えた人が5%だった【図表1】。 各年代で女性のほうが「長くなった」割合が高く、特に10代女性では約6割(59%)、男性10代でも4割(42%)が「長くなった」と答えている。ただし、10代にはスマホを使い始めた人も含まれるため、ほかの年代に比べて利用時間が増えている人が多いといえる。 興味深いのは、男女とも20代~30代は「短くなった」と答えた人が1割程度いることだ。 全体的にスマホ利用時間が長くなり傾向があるなか、ライフスタイルの変化によって利用時間が短くなる人も一定数存在することがうかがえる。 次に、ネット動画(YouTube、Netflix、Amazonプライム・ビデオなど)の視聴時間について、ここ1、2年でどう変化したかを聞いた。全体の2割強が「長くなった」と回答。ここでも、各年代で女性のほうが「長くなった」割合が高く、男女とも若年層ほど「長くなった」割合が高い【図表2】。 一方、ここ1、2年でのテレビ視聴時間の変化を聞くと、全体の1割弱が「長くなった」、2割強が「短くなった」と回答。スマホの利用時間とは真逆に、短くなった割合のほうが高い結果となった【図表3】。 男女とも若年層のほうが「短くなった」割合が高く、男性10代では36%、女性10代でも35%が「短くなった」と答えている。シニア層でも「短くなった」割合の方が高く、全体的にテレビを見なくなった傾向がうかがえる。
利用時間が増えた/減っただけで心配すべきではない
J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を行なったモバイル社会研究所の小島誠也さんに話を聞いた。 ――わずか1、2年のうちに4人に1人もスマホ利用時間が長くなったと答えている理由は、ズバリ何でしょうか。 小島誠也さん 動画やSNSのコンテンツの充実に加え、スマホで利用できる便利なサービスが増えたことで、利用時間が長くなっていると考えられます。 ――これは心配すべきことでしょうか。それとも時代の当然の流れなのでしょうか。もし心配すべきことなら、どういう対策を取ればよいのか。また、時代の流れとするなら、スマホ利用に関してどう磨きをかけていけばよいでしょうか。 小島誠也さん スマホの利用時間が増えた/減ったということだけで、心配すべきとはいえません。当研究所の調査では、スマホ利用時間が長い10代は、多くが「大半が楽しい時間」と感じているデータもあり、必ずしも長時間利用=悪、ということではないかと考えます。 ただ、目的もなくダラダラと触って時間を無駄にしてしまったと感じる場合などは、そうした利用を減らす意識も必要かと思います。また、利用時間が増加している人が多いことは、時代の流れと言えなくもないですが、その一方で短くなった、と回答している人も20代~30代にいることも着目する点かと考えます。
SNSコミュニケーション、買い物決済で女性の利用が多い
――それにしても、スマホ利用時間が長くなる人が女性のほうが多いのは、どういうことでしょうか。シニア層でも男性の2倍近くです。 小島誠也さん 若年層で利用時間が増加した割合が高いのは、日々新たなサービスやコンテンツに触れる機会が多いほか、人とのコミュニケーションも活発であるため、日に日に利用時間が増加していくことが考えられます。 男女差について、女性のほうがSNSでのコミュニケーションとか、買い物での決済とか、スマホの利用時間自体が長い傾向があり、普段からスマホで多くのことを行っているからと考えられます。 そのため、新たなコンテンツやサービスなどに触れ、利用時間が長時間化する傾向も、女性のほうがシニアも含めて顕著であると思われます。 ――なるほど。一方で非常に面白いのでは、20代~40代男性、20代~30代女性の一定数(1割以内)で利用時間が減ったと答えている人がいることです。「ライフスタイルの変化」とだけ説明していますが、具体的にはどういうことでしょうか。 小島誠也さん ライフスタイルの変化については、パートナーができたとか、子どもが生まれたといった家庭環境の変化や、職場などの仕事環境の変化が考えられます。 20代~30代では、特にこうした変化がさまざま起きるタイミングであるため、スマホの利用時間に影響しているものと思われます。
シニア層の7割、テレビ見ながら「スマホいじり」
――テレビ視聴時間が全体的に短くなったのは、その分の時間をスマホに費やしているからでしょうか。それとも、メディアとしてもテレビの役割をスマホが代替するようになったと考えていいでしょうか。 小島誠也さん テレビの減少分がスマホに費やされているということは必ずしも言えないと考えます。テレビを見ながらスマホを利用する、なども近年は多く見られます。 当研究所の「イエナカ時間のスマホ利用」の調査では、テレビを見ながらスマホを利用する割合は全体の約8割で、高年層でも7割近くが「スマホいじり」をしながらテレビを見ているほどです。 しかしながら、SNSなどによって、これまではテレビでしか得られなかった情報が、手軽にスマホでも得られるようになった影響は多少あるものと考えられます。 ――今回の調査で、特に強調しておきたいことがありますか。 小島誠也さん スマホの利用時間の増減から単純に良し悪しを語ることはできませんが、ご自身が適切だと思う範囲で、メリハリをつけてスマホを活用していただきたく思います。 (J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)