スマホ海外勢台頭 国内メーカー困惑

スマートフォン(高機能携帯電話)が急速に普及するなか、携帯電話会社の国内メーカー離れが顕著となっている。かつて携帯会社と電機メーカーは二人三脚で端末の開発に取り組み、日本独自の機能を持つ「ガラパゴス携帯」を生み出したが、スマホの伸長とともに海外メーカー製品が台頭。14日にはKDDI(au)が米アップルの「iPhone(アイフォーン)」の販売を始め、この流れはさらに加速する。主戦場の日本でさえ、国内メーカーは「立ち位置」を見失い始めた。
 「82%のお客さまから通信速度を満足してもらっている」
 9月末に開かれたauの冬モデル発表会。アイフォーン販売を公表する前のタイミングで、KDDIの田中孝司社長が真っ先に挙げたのは台湾HTC製の「EVO 3D」だった。夏モデルでは、シャープ製の「インフォバー」など国内製品を前面に押し出していたが、一気に方向転換を図った形となった。
 HTCの販売シェアは日本では6位だが、世界だと2位。米グーグルの基本ソフト(OS)「アンドロイド」を搭載した機種を大量投入し、グーグルブランドの端末も開発する親密な関係にある。KDDI内にも「HTCとの関係が強くなってきたところなのに…」(幹部)と、アイフォーンへの主役交代を戸惑う声も聞こえたほどだ。
 ◆KDDI“転身”
 KDDIの“転身”に象徴されるように、スマホのメーカー別シェアは海外メーカーが上位を占める。市場調査会社BCNによると上位5社のうち3社が海外勢。機種別の1位は韓国サムスン電子製の「ギャラクシーSII」、2位は「アイフォーン4」、3位は英ソニー・エリクソン製の「エクスペリア・アクロ」で、6位までが海外勢だ。
 NTTドコモも、次世代高速通信「LTE」に対応したサムスン製の端末など4機種を10月中旬に発表する予定。富士通東芝モバイルなど国内製品も投入されるが、「どうしても脇役になる」(ドコモの幹部)。
 一方、ソフトバンクモバイルは9月の冬モデル発表会でシャープやパナソニックなど国内製品をアピールした。ただ、アイフォーンだけに依存する経営戦略の転換を迫られるなかで、中国メーカーのファーウェイやZTE製品の投入も進めるなど、「暗中模索している」(業界関係者)との見方も強い。
 ◆世界標準に出遅れ
 なぜ、携帯会社は海外モデルを選ぶのか。OSのシェアで世界首位のアンドロイド端末ではサムスンやHTCが開発段階からグーグルと連携し「開発スピードも速く、アンドロイドとの相性が格段に高い」(MM総研の横田英明研究部長)のが理由の一つ。両社は米マイクロソフト(MS)のOS「ウィンドウズフォン」の端末も投入し、MSとの関係を築き始めている。
 スマホ投入が遅れた国内メーカーはグーグルとの関係は緊密とはいえず、ワンセグやおサイフケータイなど「ガラパゴス機能」で差別化を図るのがやっと。開発資金も乏しく、「世界に打って出られる機種はない」(アナリスト)ため、国内需要の奪い合いに終始している。
 もっとも、海外モデルの隆盛は携帯会社にも苦境をもたらしつつある。従来の携帯電話ではメーカーとともに、ネット接続や音楽配信など独自のサービスを提供してきた。ただ、世界標準モデルのスマホでは対応にも限界があり、「インフラの通信回線を提供するだけの『パイプ屋』に成り下がりかねない」(通信会社幹部)との懸念が強まっている。(森川潤)

タイトルとURLをコピーしました